「自分の周りに味方がどれだけいるか」。日本ユニシスでCTO(最高技術責任者)を務める保科剛氏は、2020年に向けてエコシステムの形成がIT産業の中で勝ち抜く重要な条件になると考えている。
ITの活用が企業から個人、社会へと広がり、適用するテクノロジの進歩がいっそう速くなる。それらに1社で対応するのは容易なことではない。そこに、価値観を共有できる強い“味方”を求める理由がある。
IT産業変遷からの予想
保科氏は、過去のIT産業の変遷から5年後、10年後の産業構造を予想する。メインフレーム時代の垂直統合から1980年代のパソコン時代に水平分業へと大きく変わり、企業のIT化も大企業から中小企業へと広がる。
インターネットの時代になると、音楽や書籍、旅行などの販売、流通に大きな変革をもたらす。さらにクラウドの登場で、多くの業種、業態に革新的なビジネスモデルが生まれ、旧勢力の存在が脅かされる。淘汰される企業も出てきた。
仕掛けるIT企業も、IBMからMicrosoftやIntelなどへと代わっていく。テクノロジの進化がIT業界に変革を促すからだ。1990年代、IBMはハードからサービスへと舵を切る。2010年代、Microsoftは「ソフトとサービス」から「デバイスとサービス」企業への変身を打ち出す。
10年代後半に入って、再び構造変革に迫られ始めた。ハードやソフト、サービスといった縦割り組織による商品開発や提供形態が、顧客の求めることとのギャップが表面化してきた。「役立たない」ので、「要らない」ということだ。
その解決の道が、全米家電協会が主催する1月のCES(コンシューマエレクトロニクスショー)に見られた。ロボットやウエアラブル、ドローン(小型無人飛行機)など複雑なソフトをハードに組み込んだ商品を、ITベンチャーらが出展していた。
それら商品はハード、ソフト、サービスという区別をしていない。一体化されている、そんな商品を生かすことは伝統的なIT企業に新しいビジネスモデルを創出させることにつながる。
例えば、複数のITベンチャーを支援し、自社商品に彼らの商品やサービスを組み合わせる。関係を深めるために、資本参加やM&Aをする。そして、価値観を共有できるITベンチャーから大企業で形成するエコシステムを作っていく。
そこには、新しいタクシー会社を展開する米Uberのような異業種が加わり、古典的なビジネスを再定義することもある。
エコシステムには、個人も参画する。クラウドソーシングを始めとする各種クラウドサービスの活用がそれを可能にした。3Dプリンタを駆使した画期的な商品作りに挑戦する個人もいる。そんな人たちと組み、1社では実現できないことに挑む。