変革迫られる日本ユニシス
もちろん、日本ユニシスも変革を迫られている。従来型のシステム構築、運用に依存した収益構造の維持はだんだん難しくなっている。そこで、14年12月に発表した2020年に向けた中期経営計画に、「業種をつなぎ、企業のデジタルビジネスを最速、最適に提供するサービスとプラットフォームの提供」を盛り込んだ。
例えば、eコマース、決済、スマートデバイスなどを使って、競争優位を築く企業がつながるエコシステムを作る。そこに参画することが、成長戦略になる。
12年の大日本印刷との資本、業務提携もそうした中で生まれた。中計には「決済サービス事業運営やECサイトの知財を基に、利用者視点のマーケティングサービスや顧客接点を最適化するサービスを開発する」などを協業目標に入れる。
電子バリューカード、ミラノ万博でのマーケティングサービス、ECシステム構築などいくつかの事例が既にあるという。
保科氏は「異業種の連携は、イノベーションよりトランスフォーメーションにある」と語り、自らの変革が求められるとする。とくに「自社でなんでも作る」という完全自前主義は捨て去る。そうしなければ、考え方や目的を共感する人たちが集まってこない。
一方、例えば自ら農場を経営し、実際の現場を知る。ここでの経験が顧客の商品やサービスの価値を一層高めることにも生かせるからだ。大企業を出し抜くような商品やサービスの開発に取り組む中小企業のプロジェクトに参画もする。そんなIT企業が10年後にも生き残っているのだろう。

- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。