デロイト トーマツ コンサルティングは3月2日、グローバルでのITの最新動向と市場予測をまとめた年次報告書「Tech Trends 2015 The fusion of business and IT」(日本語版)に関する記者説明会を開催した。
「Tech Trends」は、同社が2010年からグローバルで発行している報告書で、英語版は米国時間2月3日に公開された。日本語版は、今年が初めてとなる。

Deloitte Consulting プリンシパル/グローバルコンサルティングテクノロジ部門CTO Mark White氏
説明に登壇した米Deloitte Consultingのプリンシパルでグローバルコンサルティングテクノロジ部門の最高技術責任者(CTO)であるMark White氏は、今年のテーマは「ビジネスとITの融合」であるとし、「今後、企業の最高情報責任者(CIO)は、最高“インテグレーション”責任者の役割も担うことになる。グローバルでビジネスを展開するためには、経営とITとを戦略的に連携させなければならない」と訴えた。
日本語版の発行を担当したデロイト トーマツ コンサルティング パートナーの安井望氏は、「企業におけるテクノロジの位置付けが変化している」と指摘。今後は企業競争力を生み出す「攻めのテクノロジ」と、新たな脅威に対応する「守りのテクノロジ」のバランスを保ち、スピード感を持ってビジネス環境の変化に対応できるIT基盤を構築することが重要であるとの見解を示した。
安井氏は、日本企業が着目すべきトレンドとして「CIOの役割の変化」「エンタープライズクラウドの実現」「基幹システムの統合」を挙げる。CIOの役割の変化について「日本企業では、CIOというポジションすら存在しない企業も多い」と指摘しつつ、「グローバルにおいて、デジタルはビジネスに大きな変革をもたらしている。そのような状況では、社内の“インテグレーション”を担うポジションが必要だ」と訴える。

デロイト トーマツ コンサルティング パートナー 安井望氏
「日本のIT投資は、自動化による業務効率化とコスト削減を主な目的としていたが、(CIOが)これまでのようにシステムの“お守り”だけを担当していたのでは、グローバル競争で勝ち目はない。ITの守備範囲はデジタル化、データ管理、新技術の導入、カスタマー理解と広がっている。CIOには経営層や各部門とITとを結び付け、新たな価値を創造するリーダーシップを発揮できる能力が要求される」(安井氏)
エンタープライズクラウドの実現については、「日本のクラウド化は、米国と比較して遅れている。競争力の確保の観点からも、クラウドへのシフトは必然」とし、「単体システムのソリューションとしてクラウドを捉えるのではなく、複数のソリューションとして鳥瞰的にクラウド環境をデザインすることが重要」であるとの見解を示した。
クラウド化のアドバンテージは、サイロ化したIT基盤を解決できることである。特にセクショナリズムが強い日本企業では「クラウド化は硬直したIT基盤をビジネスと融合するチャンス」(安井氏)であるという。
安井氏が「日本企業にとって最も大きなハードル」として挙げるのが、基幹システムの統合である。特に海外子会社を抱えている企業は、統合基幹システムをゼロから再整備する時間がない。さらに、グローバル企業は統合基幹業務システム(ERP)をパッケージで利用する傾向が強いが、日本はカスタマイズして利用するケースがほとんどだ。そのため、単なるシステムの入れ替えでも1~2年の時間がかかる。
安井氏は「基幹システムの統合を進めている間もビジネスは待ってくれない。スピードを重視し、『ビジネスに貢献する基幹プラットフォームは何か』の視点で作業する必要がある。すでにグローバル企業は、基幹システムの融合を完了させ、次のフェーズに進んでいる。日本企業は、基幹システムの融合を進めつつ、いかに速く彼らに追いつくかを考慮しなければならない」と指摘した。