対談を終えて
サイボウズとの対談中、頻出したキーワードは多様性と協調性の2つであり、全ての判断の基準となっていた。連載第6回のチームラボとの対談でも感じたことだが、やはり「ブレないコンセプト」が企業価値変遷の軸となることはもはや疑いがないようだ。
また、後半の議論では、デジタルテクノロジの良さの1つとして「非同期化しやすい」という点が挙げられた。ビジネスの現場においても、実は非同期にすることで解決したり、新たな価値が発見されるケースがありそうだ。
例えば、テレビ放送にはリアルタイム性が高いもの(スポーツ中継やニュース)と、コンテンツ性が高いもの(ドラマやドキュメンタリー)があるが、後者はよく考えれば月曜9時などの特定の時間にテレビの前に張り付いている必要はなく、非同期に楽しめるものだ。
現在は録画や別途費用のオンデマンド配信というソリューションしかないが、放送局側が意図的に非同期にコンテンツを届け、それでいてしっかりと広告モデル(もしくは受信料モデル)が成り立つような仕組みを提供出来るのであれば、コンテンツ産業のデジタルバリューシフトが起こるだろう。
もっとも、テレビ産業は歴史が深く、構造的な問題を孕んでいるので一筋縄ではないが、このような産業こそデジタルバリューシフトにトライするべきだろう。
連載第7回で、対談シリーズは一段落する。いよいよ次回連載第8回からは、デジタルテクノロジが企業のビジネスそのものを変遷させていくストーリーについて論じていく予定である。

和やかな対談の様子、左が筆者
- 林 大介
- シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス マネージャー 電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とし た戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoT/IoE などの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。