オンプレミス 、クラウド 、ハイブリッドクラウド……。ITシステムの有り様は多彩になり、自由度を増している。そのような中で、企業は何を指標にシステムの運用形態を選び、構築していけばいいのか。今回はそのひとつの解として、株式会社サイバーエージェントのプライベートクラウドに注目してみたい。
サービスごとに最適なインフラを選べるようにするのが基本
サイバーエージェント 篠原氏
サイバーエージェントは、インターネット広告代理事業から始まり、アメーバブログなどのサービスでブレイクし、コミュニティサービスやスマートフォン向けゲームのコンテンツ配信などのメディア事業を中心として成長してきた。IT業界で知らぬものはいない企業に成長した今も、新たなヒットを探って多数のサービスを起ち上げ続けている。「2011年にはスマートフォン市場拡大を見据えて、2年間で100サービスを新規に起ち上げることが、社長発信のプロジェクトとして掲げられたこともあった」と、同社のインフラ&コアテク本部、シニア・ネットワークアーキテクトを務める篠原雅和氏は語る。サービス起ち上げまでの時間が短いのはもちろんだが、収益性の高いサービスを残して縮退する判断スピードも早いという。
企画からサービススタートまでの時間を短縮するため、各事業部門はそのときどきで最適なITインフラを選択して採用する。Amazon Web Services(AWS)を使ってスタートするサービスもあれば、社内に物理サーバを数十台も用意して取り組むこともあるという。同社のインフラ・コアテク本部、ネットワークエンジニアの田中淳氏によれば「どのようなサービスにどのインフラを使うべきかという議論は社内でも行われているが、いまだに議論の途上にあり、明確な方向付けは決まっていない」のが現状だという。
サイバーエージェント 田中氏
とはいえ、大まかな方向性は見えてきているようだ。アプリケーションエンジニアたちの間ではAWSをベースにした開発手法がデファクトスタンダードになりつつあり、情報交換も活発に行われている。しかし、だからといってすべてをAWS上で開発、運用するわけにもいかない。「すべてをAWSに移行すればコスト面で見合わなくなる。また、標準的な環境だければ対応が難しいサービスもある。こうした要望に応える基盤は、やはり社内で持つしかない」と田中氏。
欲しいものが欲しいときに手に入る、しかし標準的なものしか手に入らないパブリッククラウド。それに対して、特殊なものであっても、欲しいものを欲しい時に提供できるようにするために、プライベートクラウドの構築に取り組み始めた。