重視したAPI連携とエンジニアコミュニティの情報量
F5のロードバランサには、古くから公開APIがが用意されており、外部システムと連携しやすいという特徴がある。「アプリケーションエンジニアがGUI画面でVMを作り、ネットワーク設定できるように作り込んでいくためには、APIで連携できるネットワーク機器は欠かせない」と田中氏は言う。
Cloverにはまだその機能は実装していないものの、スピーディなサーバ、ネットワーク提供のためにセルフサービス画面の開発は避けて通れないという。OpenStackのような標準化も必要だが、より細かな作り込みを行うためには、挙動に慣れ親しんでおり、公開APIも持つF5製品が適していた。
独自開発の苦労を聞いている中で、開発者コミュニティの存在もプラスに働いたことが分かる。。ロードバランサとしてのノウハウを多く持っているだけではなく、世界中に数多くのユーザーを抱えている。それらのエンジニアが知恵を出し合うコミュニティサイト「DevCentral」を運営しているのである。
「インフラエンジニアであってもアプリケーションエンジニアであっても、何かわからないことがあればすぐにネットで検索する。F5に関しては、ネット上で見つかる情報量が圧倒的に多いと感じる。多くの課題は既に経験しているエンジニアがいて、DevCentralで解決策が見つかることも多かった」と、篠原氏は言う。
サービスが次々に立ち上がるサイバーエージェントのような環境では、課題の発見から解決までの時間をいかに短くできるかというのは大きなポイントとなっている。「機械製品は壊れるものだし、新しいことにトライしていけば想定外の挙動が出てくることもしかたない。問題は、いかに短時間でそれを解決できるかだ」と、田中氏も指摘する。
こうした情報量の多さは本来、OpenStackのような標準化された技術が持つ強みのはずだが、今のところはまだ、ネットワークベンダーであるF5が持つ課題解決力に一日の長あり、と言ったところなのかもしれない。
最後に両氏に、今後プライベートクラウドに取り組もうと考えている企業に向けてコメントを求めたところ、「自分たちもまだトライ&エラーを繰り返しながら正解を模索している段階。ここから得られる知見を価値と捉えることができるかどうか、ということも含めてそれぞれの正解を探して行ってもらいたい」と答えた。少なくとも、エンジニアが大半を占めるサイバーエージェントでは、このトライ&エラーから得られるものは大きいと実感しているようだった。