中堅中小でもロボットを--富士通、人と機械が協調するものづくり現場に取り組み

大河原克行

2015-03-06 17:39

 富士通は、人と機械が協調して生産する「次世代ものづくりICT」の環境構築実現に向けた取り組みを開始。社内実践に基づいた“リファレンスモデル”を構築し、ここから得たノウハウや手法、ツールを新たなソリューションとして10月から順次提供する。ロボットメーカーと連携することで、大手企業への導入が中心だったロボットを中堅中小企業が導入できるように支援する。

 これらの活動を推進する専門組織として「ものづくりソリューション事業推進室」を4月1日に20~30人規模で設置。社内のものづくり強化と製造業への提案活動などを推進する。新たなソリューションを提供することで、ものづくりサービス事業の売上高目標を500億円上乗せし、2017年度には年間2000億円の規模を目指す。

花田吉彦氏
富士通 執行役員常務 産業・流通営業グループ長 花田吉彦氏

オールジャパンで国にも働き掛け

 執行役員常務で産業・流通営業グループ長の花田吉彦氏は、「日本を代表する製造業では、グローバル分散生産の流れは変わらないものの、最近の円安を背景に国内回帰の流れが鮮明になってきている。一方で、ドイツでは“Industry 4.0(第4次産業革命)”、米国では“Industrial Internet Consortium(IIC)”が提唱されるなど、各国で自国製造業の復権、強化が始まっている。日本でも日本再興戦略でロボット革命実現会議を開始しているが、すでに日本では、Industry 4.0が目指しているところへと向かっている」と製造業を取り巻く状況を解説した。

 「今回の取り組みは、2012年のものづくり革新隊サービスの発表、2013年の設計/製造受託サービスの発表に続く、富士通が提供するものづくりサービスの第3弾になる。富士通が持つ通信技術と製造現場で活用しているロボットに関するノウハウを組み合わせるとともに、国内のものづくりに関わる、さまざまな業種の企業との協業でオールジャパン体制で日本の製造業に対するものづくりを支援し、グローバルな競争に勝ち抜くものづくりの実現をICTで支援する。コンサルティングを含めて提供することで失敗しない支援を行いたい」(花田氏)

 富士通では、PCやサーバ、ネットワーク機器などの国内生産にこだわっているのが特徴。1台のロボットで複数作業を行ったり、コンベアラインと同期した自動試験装置の導入、ウェアラブルデバイスによる作業ナビ、回路基板への個別ID付与によるトレーサビリティ、ユーザーごとのカスタマイズ項目を工場で組み込むといったことを実現している。

 部品のバラツキに柔軟に対応する自律制御や工程変更に迅速に対応する制御プログラムを自動生成するロボットのシステム開発、IoT(Internet of Things)を活用した工場設備の監視、部品特性や湿度などの要因による製造品質の予測などを社内で実践しており、これらをリファレンスモデルと位置付ける考えだ。

宮澤秋彦氏
富士通 テクノロジ&ものづくり本部長 宮澤秋彦氏

 テクノロジ&ものづくり本部長の宮澤秋彦氏は、「次世代のものづくりを『スマートなものづくり』と呼び、工場現場でのICT化、自動化、ネットワーク化を進め、ノウハウの継承や適正品質の実現、さらには開発と製造のリードタイム短縮などを通じて、新たな価値の創出を目指す。オールジャパンの取り組みとして、国にも働き掛けていきたい」と今後の狙いを説明した。

リードタイムを2分の1--生産性を2倍に

 10月から順次提供する「社内実践のノウハウを搭載したものづくりソリューション」として、組み立てなどのリアルと設計シミュレーションなどのバーチャルを問わず、ものづくりに関わるさまざまな情報を統合的に扱い、場所や時間の制約を受けない製品開発情報を共有する「人や情報の遠隔地間コミュニケーションを実現する“仮想大部屋”技術」、過去の設計事例を知識として学習し、設計の高度化を支援する「知識・学習エンジンによる設計/検証自動化」、段取り替えや作業組み替えのミニマム化、ロボット導入障壁の解消を行う「変化、変動するものづくりの現場においてロボットが作業を学習し適切な動作を行う自律・協調制御技術」を提供する。

 また、バーチャルモデルのレベル向上を目指す「人による現場改善の自動反映」、IoTを活用し、障害予兆検知や製品ライフサイクル全域での品質安定化、チューニング作業の自動化を行う「ものづくりナビゲーション」、製造ラインを止めずに環境変動に素早く対応した生産割り付けの立案を行う「ものづくりの動的アロケーション」も提供する。

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