The New York Timesは、Hillary Clinton氏が米国務長官在任期間中、公務に私的な電子メールアカウントだけを使用していたと報じた。本記事では、IT担当者がこの驚くべき事実から何を学ぶことができるのかを考察する。
The New York Timesは先頃、元米国務長官のHillary Clinton氏が、いくつかの政府の方針に違反して、自分の私的な電子メールアカウントを公務に使っていたことを明らかにした。さらに、報道によれば、Clinton氏は政府の公的電子メールアカウントすら持っていなかったという(編集部注:同氏はこれを受け、米国時間3月10日、釈明会見を行い、法令は順守していたと主張。また電子メールのアーカイブに関する懸念についても対応を説明している)。
その後の一部の報道では、Clinton氏の私的な電子メールアカウントは政府機関レベルのセキュリティを提供していたことが示唆されている。しかし、同氏が私的なアカウントを利用していたことで、法律で定められた重要な手続きである、通信文書の記録がなされていなかったことになる。こうした手続きによって、選挙で選ばれ任命された政府高官の通信文書に基づいた、将来の調査や監視から、将来世代の歴史家たちによる政策研究など、あらゆるものに使われる記録がもたらされる。
今回発覚した事実は、ITリーダーたちにとってはあまりにも聞き慣れた話だろう。彼らは何百人もの従業員に対応しており、そうした従業員の一部は、「Dropbox」から「Gmail」まであらゆるものを使い、ITポリシーを回避していることがあるからだ。
「歴史的記録」の保存
企業が幹部の通信文書のアーカイブを、未来のある時点で歴史家に引き渡すことは考えられないものの、実質的には、電子メールが依然として社内外の当事者間のコミュニケーション手段として使われている。電子メールアーカイブの重要性を疑うのなら、過去10年間にあった、大企業が関与した訴訟のどれかを見てみるといい。電子メールが訴訟手続きで重要な証拠とされていることが多いのに気付くだろう。電子メールアーカイブは、ベンダーとの紛争の解決から、人事関係問題の十分な調査まであらゆるものに関して、社内的に重要になることもある。
主要な電子メールプラットフォームはどれも、アーカイブ機能をサポートしている。また低価格のストレージと強力な検索能力があれば、アーカイブの技術的な面は単純である。しかし、アーカイブの法的側面と、評判に関する側面は認識しなければならない。社内全員のアーカイブを稼働させ、全ての電子メールを何十年も保持することは、技術的には容易かもしれないが、ハードドライブの空き容量に関する懸念をはるかに上回る問題が存在している。
Clinton氏の場合には、公人であるため、あらゆる通信を記録し、保存する明確な動機が存在するが、ほとんどの企業にとっては、大規模なアーカイブは、価値あるものになるのと同じくらい、負担になる可能性がある。少なくとも、法務担当者と相談した後に、人事部と協力して、アーカイブされる範囲と、適切な電子メールのエチケットについて、従業員を教育する必要がある。
提供:Matt Elliott/CNET