H・クリントン氏の私的メール使用問題の教訓--企業での電子メールアーカイブ - (page 2)

Patrick Gray (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-03-13 06:00

コンプライアンスの確保

 IT部門の最大の課題はおそらく、大半の従業員にとって、雇用者がもはや、テクノロジを提供してくれる最適な存在ではなくなっていることだろう。企業ITの勃興期には、1人で接続性の高いコンピュータデバイスを何台も所有したり、電子メールアカウントから完全なCRMシステムまであらゆるものを、5分ばかりの時間といくつかの基本的な情報だけで設定したりすることは、単に費用対効果が良くなかったか、不可能だった。

 こうしたサービスの多くが会社にある同等のものよりも使いやすくなる中で、自分が好きな電子メールシステムを手放したくないからと、会社のアカウントは要求しないという従業員が出てくる可能性は高い。さらに、多くの従業員が、数年ごとに仕事を変えるために、現在の雇用者のインフラにはあまり重きを置かないようにしているという点では、次第に政治家のようになってきている。米国務省は、Clinton氏が政府の電子メールアカウントを取得すると思い込んでいたようだが、多くの会社も同様の思い込みをしているため、大変な不利益を被ることになりかねない。

 コンプライアンス強化は、高圧的なことに思える場合もあるが、ほとんどの場合、比較的痛みを伴わずに行うことが可能だ。特に、従業員を信頼できる大人として扱いつつ、100ページもある「禁止事項」が書かれたマニュアルを作成しないようにすれば、それは可能である。基本的なITに関連する抑制と均衡のシステムを、従業員の就職時や退職時の手続きに組み込むようにしよう。自分の会社が頻繁に、請負業者や派遣社員と契約するのであれば、この作業のほとんどは既に完了している可能性もあり、次第に派遣社員に近い立場になっている従業員にもそれを適用できる。新しい従業員に対しては、会社の電子メールのアーカイブと記録管理を行う能力は、メッセージを交換する能力と同じくらい重要であること、そして、彼らの通信の記録は、従業員に警備員のバッジを与えて、彼らに会社の入り口を守ってもらうよう期待するのと同じくらい、会社を守るためには不可欠であることを説明しよう。

 新しい従業員のそれぞれに電子メールアカウントを与えた上で、会社支給の電子メールは、コミュニケーションを促進する、また会社を代表して行ったコミュニケーションの歴史的な記録を残すという両方の点で重要なツールだというメッセージを確実に伝えることは、IT部門の責任である。われわれはもはや、従業員が会社のツールを喜んで採用すると見なすことはできない。多くの人々は、自分の好みの電子メールアカウントや、その他のITツールを手にして会社にやってくるのだから。

 有力な大統領候補を相手にすることはないかもしれないが、劣っている可能性のある会社支給のツールを使わなければならないことに疑問を抱く、強烈な個性の持ち主に出会う可能性は高いだろう。よく考えられたポリシーを用い、従業員に丁寧に向き合うことで、自社の「歴史的アーカイブ」に大きな穴が生じるのを避けられるはずだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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