難関
Smith氏によると、過去1年のシステム開発では、どういった情報が利用可能になっているかとともに、その情報をどう利用すべきかを見極める作業が大きな比重を占めたという。
この作業の後、両社は長い時間をかけて、エレベータ設備から送られてくるデータを取り扱うためのソフトウェアを開発した。
Smith氏は「われわれはさまざまなタイプのエレベータやエスカレータを提供しているため、この作業は非常に複雑だった」と語っている。
「われわれはルールエンジンの構築と、サポートソフトウェアの開発に多大な労力を費やさなければならなかった」(Smith氏)
Microsoftとの作業のなかで同社は、このシステムが最善の行動を採れるよう、エレベータから送られてくるエラーコードの処理優先順位を決定するソフトウェアを開発する必要もあった。
まず、データ収集装置の設定を変更し、緊急対応を要する可能性をはらんだエラーコードが即座に会社に報告されるようにした。
しかし、これでは大量のエラーコードが毎日送られてくることになるため、ThyssenKruppとMicrosoftはエラーコードを解釈する「極めて複雑なルールエンジン」を開発したのだという。このルールエンジンは、一般的な条件だけでなく、エレベータが設置されている国といった具体的な条件も考慮するようになっている。Smith氏によるとこの種のルールエンジンの作成は「直面している最大の難関の1つ」だという。
ThyssenKruppは他にも、Azureクラウド上のデータやシステムと、ThyssenKruppのERPシステム(米国ではOracle、欧州ではSAPが採用されている)の統合に注力する必要があった。
このプロジェクトはまだ初期の段階だが、Smith氏は同社のエンジニアがエレベータに関する専門知識を持ち歩けるようにし、対象を狙い撃ちにした点検の実施によって故障停止をなくすという、ThyssenKruppの目標を実現したいと願っている。
Smith氏は「一般的に言って、エレベータ会社は『何が起こってもわれわれが修理する』、つまり、あらゆる故障に対する修理コストは既に支払われているという前提のもとに、メンテナンスを請け負っている。われわれが行わなければならないのは、(エレベータごとに)故障をなくすことであり、このシステムはそのコストに見合うものだ」と語っている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。