三国大洋のスクラップブック

米テレビ業界の苦境につけ込むアップル“ウェブテレビ”の皮算用

三国大洋 2015年03月19日 07時30分

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 「Appleが今年秋にもウェブ経由の動画配信サービス(ウェブTV)を始める可能性がある」という話が米国時間3月17日にWSJで報じられ、内外のさまざまな媒体でこの話題が採り上げられていた。

 Appleによるテレビ分野参入の可能性は、何年も前から噂が流れている話題のひとつだが、これまでの報道と今回のWSJ報道には主に次のような違いがある。

1.スケジュールや提携テレビ局、料金などが具体的に言及されている
2.ハードウェア(テレビモニタ)への言及がない(マネタイズの方法について面倒なことを考えなくてよい)

これに

3.最近のネット動画配信分野をめぐる活発な動き

を考えあわせると「いよいよか」という感じが強くする。今回はこのAppleのウェブTVが「どんな規模の事業になりそうか」などの点について考えてみる。

Apple Watchに匹敵する事業になる可能性

1.についてWSJでは以下の点を記している。

  • スケジュール:
    6月にサービス発表(おそらくは開発者向けカンファレンス「WWDC」で)
    9月にサービス開始(9月は米テレビ業界の新年度の始まり)
  • 提携テレビ局/映画会社(チャネルを提供するコンテンツ事業者):
    ABC、CBS、Foxなど25社(チャネル)程度でスタート
    スポーツ専門放送局ESPNを擁するWalt Disneyとも協議中
    NBCUniversalは当面提供を見送る可能性
  • 料金設定:月額30~40ドル

 料金設定については「月額20ドル前後」とするNYPostの報道などもみつかる。

 テレビモニタに接続して使う、いわゆるセットトップボックス=STBである「Apple TV」の累計出荷台数が2500万台に達したことをTim Cookは3月9日にあった発表会の冒頭で明らかにしていた。地域別の台数などは不明なので、ここでは米国での販売台数を全体の40%=1000万(世帯)台と仮定してみる。

 またAppleが受けとる手数料については、「売り上げの3割(iTunesの音楽やアプリと同等)という見方」もあれば、「既存の有料テレビ事業者(ケーブルテレビや衛星放送)と同じ5割」という見方もあるようだ。GoogleのYouTubeでの取り分は広告売り上げの45%らしいので、ここでは40%と仮定してみる。

Apple TV:1000万世帯
月30ドルで3億ドルの売り上げ、40%の手数料で月1億2000万ドルの粗利
月20ドルで2億ドルの売り上げ、40%の手数料で月8000万ドルの粗利

 つまりサービスだけで、四半期(3カ月)に売り上げ6億~9億ドル、粗利2億4000万~3億6000万ドル程度、1年ではその4倍(売り上げ24億~36億ドル、粗利9億6000万~14億4000万ドル程度)の事業になり得る可能性が考えられる。

 4月に発売になる「Apple Watch」については、初年度の出荷台数が世界全体で1500万~3000万台という予想が出ていた。また平均単価についていろいろな数字が出ていたのは以前に記した通り。そこで、ここでは「1500万台、単価450ドル」と仮定してみる。

初年度の売り上げ:67億5000万ドル

 粗利率についての予想はまだ目にしていないが、たとえば

粗利50%で33億7500万ドル
粗利40%で27億ドル

 米国だけの売上比率は不明(Appleの世界全体の売上に占めるAmericasの比率は約40%)だが、ここでは3分の1を占めると仮定して

初年度の粗利:9億~11億ドル

といった感じになる。1000万世帯というのは米国の有料テレビ契約者(世帯)数の約10%にもなるので、かなり多めの数字であるのは間違いない(Apple TVユーザー全員が既存の契約を解除してウェブTVに乗り換えるとは思えない)。

 ただ、HBOが先週のAppleイベントで開始を発表していた、Time Warner傘下のHBOが提供予定のウェブTVチャネルであり、月額約15ドルで2000タイトル以上の人気ドラマや映画を視聴できるというサービス「HBO Now」に関するBloomberg記事には「“code-never”と称される有料テレビ放送に一度も加入したことのない消費者がすでに1000万人もいる」という記述もある。

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