現在、米沢事業場では、ノートPCで40本、デスクトップPCで20本の合計60本の生産ラインを用意。1日1万台の生産能力があると説明。そのうち、ThinkPadの生産ラインは2ライン設置。1日100台の生産規模だとしている。
Lappin氏は「日本に来た7年前には日本で設計し、世界のために開発したのがThinkPadだという表現をしていた。実際、日本がそのブランドを支えていた。ジョイントベンチャーを開始した際にグローバルな資産をもとにすれば、他の国に生産設備を移動させるという選択肢もあったが、米沢事業場が持つスキルと知識を生かすために、ここに留まろうと考えた。ついに日本でもThinkPadの生産が始まる。SNSでは、“世界各国からMADE IN JAPANのThinkPadは購入できないのか”といった書き込みもある」などとした。
米沢事業場のThinkPad生産ラインの様子
生産ラインを見学するLappin氏と安部氏
レノボ・ジャパンの横田氏は「2012年から大和研究所のThinkPad開発チームと、米沢事業場の開発チームとさまざまな協業を推進してきた。現在、米沢で開発された2機種のThinkPadがグローバルに向けて出荷されている。米沢で開発されたLaVie Hybrid ZEROが米国で開催された“2015 Internatinal CES”でPC部門で最も多くの賞を受け、米国での発売に向けて着々と準備が始まっている」と語った。
「今回、開発の協業に加えて、製造でも卓越した米沢事業場のスキルを活用できる。ThinkPadの設計、開発、製造、配送のすべてにわたるトータルな高い品質でさらなるユーザーの満足度を獲得できるものと自負している。米沢事業場がひとりでも多くのユーザーにThinkPadを届ける原動力になることを確信している」(横田氏)
どちらの製品も組み立てられる
NECパーソナルコンピュータ米沢事業場では、NECブランドのPCの生産ラインとThinkPadシリーズの生産ラインの様子も公開した。
現在、米沢事業場にはノートPCで40本、デスクトップPCで20本のセル生産ラインがある。これらは需要の変動にあわせて柔軟に稼働本数を変更でき、ひとつのラインで四半期に生産されるモデル数は、200種類に及ぶなど柔軟性を持ったライン構成が特徴だ。基本的には、ひとつずつ仕様が異なるPCを組み立てられるようになっている。
また「現在、NECブランドのノートPCを生産しているラインでは、ThinkPadを生産できる。作業者もThinkPad専任というようには決めておらず、どちらの製品も組み立てられるようにしている。15~20%程度の増産には新たな投資をせずにそのまま対応できる」(NECパーソナルコンピュータ 生産事業部長 竹下泰平氏)と言うように今後のThinkPadの需要動向にあわせて生産ラインを増減することも可能だ。
米沢事業場でのThinkPadの生産は、2012年7月に実施する意向を表明。2012年12月にデータ蓄積を目的にしたパイロット生産を開始。2013年3月まで実施したものの、2015年2月に生産を開始するまで時間がかかった。
NECパーソナルコンピュータ 生産事業部長 竹下泰平氏
「製品を受注後、それを生産指示に変える商流(ビジネスフロー)で苦労した。この点が解決したことでThinkPadの生産を開始できた」(竹下氏)
部品は共通のものを活用していても、物理的にも別のエリアに配置している。やはり、この点は異なる会社であり、管理を別々にして置く必要があるのが理由だ。この点でも専用部品エリアを用意しなくてはならなかった。こうした点を解決した結果、米沢事業場でThinkPadの生産が開始されたというわけだ。
ノートPCとデスクトップPCのラインは混在できないほか、現在、検討しているx86サーバの生産ラインは、これらの生産ラインとはまったく別のラインで構築する考えだという。
日本ならではの生産方式
ノートPCのセルラインは「Versa Pro」や「LaVie」の各シリーズの主力製品の場合には、わずか5mという短いライン長となっているのが特徴で、しかも、わずか3人で組み立て、検査、梱包までの作業を担っている。
リレー方式という米沢事業場独自の仕組みを採用。隣の作業者の遅れを作業が終わった隣の作業者がフォローして、手余りがない作業が行えるようにしている。これは、すべての作業者が「多能工」と呼ばれるように、あらゆる作業ができる能力を兼ね備えていることで実現するもの。いわば、日本の生産拠点ならではの生産方式だということもできるだろう。
生産する製品は、すべてRFIDで管理され、さらにバーコードを活用することで、それぞれに異なる部品や添付品などに取り忘れや間違いがないようにしている。添付品を取る際にもデジタルピッキング方式を採用。必要な添付品が入った棚はボタンが点灯し、そこから取り出す仕組みだ。デジタルピッキング方式は部材倉庫でも採用しており、異なる仕様のPCを生産する際にも間違いなく、部材を供給できるようにしている。
生産ラインでは、数多くの治具が活用されているほか、米沢事業場で作られた数多くの自動設備が導入されている点も特徴だ。
たとえば、Versa Proは1台ずつ異なる仕様で組み立てるが、その際に、どんなパーツを組み込むかといったことを前面のディスプレイで確認する。その際、作業者が移動しても、それに追随するように見やすい位置にディスプレイが移動して作業を支援する。