遅れる日本企業--マーケティング業務と既存ITの連携にギャップ:IDC調査

大河原克行 2015年03月25日 16時15分

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 IDC Japanは3月25日、国内のデータ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場が2019年には1300億9100万円になると予測した。2014年の市場規模は806億3800万円としており、2019年までの年平均成長率は10.0%で推移するとみている。

 IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャーの眞鍋敬氏は「国内ソフトウェア市場全体の年平均成長率は0.2%程度とフラット、その中で極めて高い成長が見込まれる分野。ECの刷新、デジタルマーケティング需要の増加などが見込まれる」と解説、課題も提起した。

眞鍋敬氏
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー 眞鍋敬氏

 「ベンダーとシステムインテグレーターは、マーケティング活動の変化にあわせたデータ活用型マーケティングの製品とサービスの提供、企業規模や産業分野の特性を意識すること、マーケティングIT購買者へのアプローチ強化が必要である」

 全世界のマーケティングオートメーションソフトウェア市場での日本の構成比は1.8%にとどまっていることを示して「ソフトウェア市場では、多いもので日本の構成比が8~10%を占める領域もある。これは、デジタルマーケティング分野で日本の企業の導入が遅れていることを示すものであり、日本の企業が海外で戦う場合、あるいは海外企業が日本に参入してきた時に戦えるのかという点で不安材料がある」と指摘した。

 同市場ではOracleやSalesforce.com、IBMなどが先行しているが、「欧米では数多くの新規参入ベンダーが相次いでおり、特定領域に力を発揮するベンダーもある。こうした企業が日本に参入することで、市場は盛り上がりをみせることになる」などと語った。

重視されるプレセールス

 今回予測した市場規模は、ウェブサイト管理、デジタルコマース、ダイレクトマーケティングなどの「顧客インタラクション管理」、オーサリングやパブリッシング、コンテンツ検索や分析などの「コンテンツ管理」、コラボレーティブアプリやマーケティングリソース管理などの「コラボレーション/リソース管理」、ソーシャルやウェブなどのデータ分析やマーケティングデータ管理などの「データ管理/分析」の4つのIT技術領域に分類。同社のソフトウェア定義と関連づけて、デジタルチャネル/オムニチャネルのデータを活用したマーケティングに利用するソフトウェア市場を分析、予測した。

 眞鍋氏は「デジタルマーケティングは、顧客の購買行動の変化、購買の決定要因の変化、購買環境の変化という3つの観点から必要性が高まっている。たとえば、家電製品を買う場合、かつてはリアル店舗で店員の説明を受けるというケースが多かった」と説明する。

 「だが、最近では、ネット上の情報を活用してユーザーの評判などを確認して、店舗に出向く人が多い。その際にも製品を確認するだけで、店舗では購入せずに価格の安いECサイトで購入するという例も出ている。旅行業界では、団体旅行よりも個人で動きたいという旅行製品が人気を集めており、年代や性別など個人に最適化された情報をもとにした製品提案が求められている」と購買行動が変化していることを説明する。

 眞鍋氏は「こうした変化にあわせてパーソナライズした提案が必要であるほか、スマホを通じた個別提案なども増えている。一方で、米国では約半分のビジネスバイヤーがメーカーの営業担当者を呼ぶ前にすでに納品させる製品を決めているという例もある。これもネットの情報などをもとにした判断であり、これに伴いプレセールスがますます重視されてきている」と昨今のマーケティング手法の変化も指摘した。

 「デジタルを活用したオムニチャネルのほか、ソーシャルとモバイル、テレビなどを横断したマルチチャネルへの対応などに加えて、パーソナライゼーション、レコメンデーション、リアルタイムオファリングを進めなくては企業の競争力がなくなっていく。デジタルマーケティングの必要性はますます高まっていくだろう」

マーケティング業務と既存ITの連携にギャップ

 同社は、2014年6月にマーケティング関連業務従事者を対象に「マーケティングITに関する企業ユーザー調査」を実施。国内583社の企業から有効回答を得た。

 これによると、マーケティングIT活用は「効率化」「分析業務」「売上拡大」が目的であることがわかったほか、従業員規模や産業分野によって、要求の強さが異なることがわかったという。

 「顧客管理、顧客データ分析などは半分以上の企業が行っているが、製品/ブランド評価分析やKPI/効果測定などの複雑なところには踏み込まれていない傾向がある。実際にデジタルマーケティングを導入した企業では、売り上げが20%向上した、効率化が30%上昇したという成果が出ている」と説明。また「今後はソーシャルの活用に関心が高いほか、コンテンツを活用したいという動きがある」などと述べた。

 その一方で、マーケティング業務と既存ITの連携にギャップがあること、企業規模や産業分野の特性を意識した製品やサービスの訴求が必要であり、マーケティングに対する意識が低くく、ITの投資体力も弱い中小企業ではクラウド型マーケティングオートメーション、クラウド型セルフサービス分析などが求められていること、さらに、マーケティングITの購買者は事業部門が中心となっており、IT部門主導の全社マーケティングの仕組みを捉えながら、マーケティングデータをサイロ化させないこと、事業部門に対するバランスを取ったアプローチが重要だとしている。

 2020年に向けて「予測分析の強化」「現状分析の強化」などの取り組みに注目が集まっており、今後の企業マーケティングは分析に対する指向が強くなっているという。ただ、その一方で、2020年に向けたデジタルマーケティング活動に関して「なにもしない」と回答した企業が31%に上ったことを懸念。「効果測定ができない」「リスク対策に不安がある」という声が課題として上がっていることも浮き彫りになった。

 「マスマーケティングからパーソナルマーケティングへと変化する中で省力化や効果の可視化が可能なツールやサービスの提供など、マーケティング活動の変化にあわせたデータ活用型マーケティング製品とサービスの提供が求められていくことになる」と予測した。

 IDC Japanは、国内データ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場と企業ユーザーの動向をとりまとめた調査レポート「国内データ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場展望」を発行。セグメント別市場動向などについてもレポートしているという。「デジタルマーケティングに関する市場レポートはこれまでにないものである」としている。

デジタルマーケティングの動向
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