10年前、Microsoftはウェブにおいて嘲笑の的となっていた。同社のブラウザ「Internet Explorer」は古くさくてセキュリティの面で劣り、動作も遅く、Microsoftのブラウザ部門はウェブの可能性を進化させようともしなかった。
それを思えば、何とも隔世の感がある。
Microsoftは米国時間3月25日、ウェブの世界で1勝を記録した。Microsoftが開発して利用を推進していた「Pointer Events」というウェブ標準について、実装しないとしていた2014年の決定をGoogleが覆したのだ。
Googleの「Chrome」担当チームのRick Byers氏は、同ブラウザの問題追跡サイトへのコメントで次のように述べた。「皆さん、フィードバックをありがとう。われわれはこれらの声をしっかり受け止め、ChromeにPointer Eventsを組み込めそうな計画に取り組んでいく」
この技術を利用すると、マウスを接続したタッチスクリーン式のノートPCやタブレットが扱いやすくなるほか、サムスンの「GALAXY Note」などのデバイスではスタイラスにも対応する。
この議論には、いくらか技術的な事情が絡んでいる。Microsoftは、タッチスクリーンとマウスでインターフェースを分けるのではなく、プログラマーが両方を扱えるようにする単一のインターフェースを提唱した。「Windows」は、スマートフォンやノートPCに加えて、タブレットにもなるタッチスクリーン搭載PCで動作するので、これは適切な選択だ。Appleは、「iPhone」および「iPad」でタッチスクリーン革命を主導したが、「Mac」はまだこの機能に対応しておらず、別々のインターフェースを選択した。「Firefox」の開発元であるMozillaはMicrosoftのアプローチを選択したが、GoogleはApple側に傾いていた。
しかし、ここで重要なのは、分かりにくい基盤技術などではなく、さらに大きな問題の方だ。ウェブは普遍的なコンピューティングプラットフォームとしての重要性を現在も保っており、Microsoftは今や、1990年代にNetscape Communicationsとブラウザ戦争を繰り広げた黎明期の頃の信頼性や重要性をいくらか取り戻しつつある。他社が追随してくれれば、Microsoftとしては喜ばしいことに違いない。コンピューティング業界における注目、顧客、支出の多くをGoogleとAppleに奪い取られている中で、Microsoftは、得られる限りの影響力を必要としているのだ。
Googleの心変わりは、ウェブにおける力の均衡の変化を反映している。2007年には、AppleがiPhoneを投入し、モバイルに最適化した「Safari」ブラウザに中心的な役割を持たせたことで、ブラウザ界における同社の影響力が急上昇した。現在、iPhoneにおけるプログラミングの関心は「iOS」のネイティブアプリへと移っており、ブラウザプラットフォームをかなり真剣に考えているのがMicrosoftだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。