NVIDIAは3月の年次カンファレンスGPU Technology Conferenceで、「Titan X」と「Quadro M6000」を発表した。いずれも、単精度浮動小数点演算で最大7テラフロップスのパフォーマンスを実現する「Maxwell」GPUを採用している。しかし、Maxwellは倍精度演算向けに設計されてはいない。それらの用途では、従来の「Kepler」GPUを2つ使用する「Tesla K80」が倍精度で最大2.9テラフロップスを実現する。一方、AMDの最も高速な「FirePro」サーバGPUは、倍精度浮動小数点演算で最大2.1テラフロップスのパフォーマンスを実現する。
これらのGPUと異なり、Knights LandingはホストCPUとして、単体で使用することが可能だ。メインストリームの「Xeon v3 Haswell」サーバチップとバイナリ互換性があるほか、同じ命令をサポートし(トランザクショナルメモリは除く)、Linuxや「Windows Server」を動かすことができる。Knights Landingは、PCI Express版アクセラレータカード版と「InfiniBand」向けホストプロセッサ版、Intelの新しい「Omni-Path」ファブリックを備えるホストプロセッサ版の3種類のバージョンが提供される。
Intelは2015年3月のOpen Compute Summitで、Knights LandingホストCPU用ソケットと6つのDDR4メモリチャネル、36のPCI Express 3.0レーンを備える1Uハーフワイド型サーバボード(開発コード名「Adams Pass」)を披露した。こうしたKnights Landingサーバは、Xeon Phiの潜在市場を拡大するかもしれない。特に、Intelは機械学習やデータアナリティクス、特定の仮想化されたワークロードといった用途に言及した。
現行のXeon Phiは世界で最も高速なコンピュータのいくつかに既に搭載されている。世界で最も高速なコンピュータをランク付けした最新の「Top500」リストには、Knights Cornerを使用する25のシステムが含まれる(それ以外のほとんどのシステムは、NVIDIAの「Tesla」GPUを使用する。AMDのGPUを使用するシステムは3つ)。
Knights Landingは2015年後半に提供される予定だ。複数のスーパーコンピューティングセンターは既に同チップを採用する計画を発表している。米国立エネルギー研究科学計算センター(National Energy Research Scientific Computing Center:NERSC)は9300個のKnights LandingホストCPUを使用する「Cori」という新システムを構築する計画で、CoriはNERSCのバークレーの施設で2016年に稼働する予定だ。米国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration:NNSA)は「Trinity」と呼ばれる新しいスーパーコンピュータで、Xeon「Haswell」サーバチップとKnights Landingコプロセッサの両方を使用する予定である。NNSAによると、Trinityはロスアラモスにある現行スーパーコンピュータの少なくとも8倍のパフォーマンスを実現するという。Intelによると、約50の企業がKnights LandingをホストCPUとして使用するサーバシステムを提供する予定で、そのほかの多くの企業は同チップをコプロセッサとして使用できるオプションを含むサーバを提供する予定だという。
かつては主に政府や学会の領域だったテクノロジを採用することで、競争を優位に進めようとする企業の増加に伴い、ハイパフォーマンスコンピューティングは拡大している。クラウド企業もサービスとしてのハイパフォーマンスコンピューティングの提供を開始している。しかし、この最先端テクノロジが興味深い理由はほかにもある。そのテクノロジはやがて下流のエンタープライズデータセンターに少しずつ広がり、最終的に消費者のPCにも到達する。Omni-Pathファブリックは14ナノメートルのXeonサーバチップで利用可能になる、とIntelは既に述べている。そのテクノロジが進化するにつれて、3D積層メモリがより広範に使用されるようになることは、ほぼ間違いない。この意味において、Knights Landingからはコンピューティングの未来が垣間見えると言えるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。