トレンドマイクロ法人向け事業戦略に見るセキュリティ対策での速度の重要性

三浦優子

2015-03-31 07:00

 トレンドマイクロが3月25日に発表した2015年の法人事業戦略では、ここ数年進めているユーザー保護の徹底(Complete User Protection)、カスタムディフェンス(Custom Defense)、クラウド&データセンターセキュリティ(Cloud & DataCenter Security)という3つのCを事業の核とし、「セキュリティ対策としてマルチベンダーよりも当社の3つのCを統合プラットフォームとして導入することで顧客保護体制は強化される」(代表取締役社長兼最高経営責任者=CEOのEva Chen氏)と複合利用を呼びかけていく。

 Office 365のようにクラウドを利用する企業ユーザーが増加していることを受け、新製品「Trend Micro Cloud App Security」(仮称)を開発。Windowsが動くデバイスだけでなく、iPadなどOffice 365が動く複数デバイスに対応し、クラウドベースのサンドボックスを介して脅威を検知するものであり、「IT環境が変化していく中、こうしたイノベーションとなる新しい製品を継続して投入していく」(Chen氏)方針だ。

Eva Chen氏
トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEO Eva Chen氏
大三川彰彦氏
トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏

 日本市場でも「マルチベンダーの個別ソリューションを導入していると、IT環境の変化に対応できなくなってきている。融合的に連携するトータルなセキュリティ対策導入が必要で、さらにSIEM(セキュリティ情報イベント管理)連携、迅速な脅威への対応など、企業を包括的に保護できる企業としてアピールしていく」(取締役副社長 大三川彰彦氏)と複数の製品を利用することで実現する包括的保護を呼びかけていく。

スレットライフサイクル全体での保護が必要

 トレンドマイクロはコンシューマー向け事業の割合が35%、小規模ビジネス向けと中堅&大企業向けビジネスが65%と企業向けビジネスがメインとなっている。

 「特に大きな成長を遂げているのが中堅&大企業向けビジネス。これは高度な攻撃が最初に行われるのがこの層だから」とChen氏は分析する。高度な攻撃に対しては、「脅威対策を単独イベントとして扱うのでは不十分で、スレットライフサイクル全体で保護していくことが必要」(Chen氏)

 スレットライフサイクルでは、モニタリング&コントロールという管理機能を中心に起きながら、(1)潜在的な脆弱性をチェックし、エンドポイント、サーバ、アプリケーションをプロアクティブに保護、(2)従来の防御策では可視化できなかった、進化したマルウェアや脅威の動向、攻撃者の通信も含めた検知、(3)攻撃や攻撃者の特性を分析し、過去に起きた事象から脅威のインパクトを測る分析、(4)自動的に防御し、優先的に保護すべきエリアを判断して最適な防御策を施す対処――という4領域を継続的に続けていくことが必要だとしている。

 トレンドマイクロが進めてきた3つのCの市場規模が拡大する見込みであることから、販売戦略としてユーザー保護領域では他社製品ユーザーに高い防御力と柔軟な管理ができることをアピールし、販売を拡大させていく。カスタムディフェンスとクラウド&データセンターセキュリティに関しては新たな顧客に向け新商材を提案することでビジネス拡大を狙う。

 カスタムディフェンス領域では、脅威の根本的原因を特定し、インシデント時の迅速な対応を実現する統合管理ツール「Trend Micro Control Manager」で各製品から脅威情報ログを共有する機能を持たせるとともに、クラウド上でマルウェアなどの情報を集める「Trend Micro Smart Protection Network」に新機能を追加する。自社にカスタマイズされた脅威に対しては、標的型メール対策、既存製品との連携による分析、ネットワーク監視、脅威の根本原因の可視化、自治体向けマイナンバー対策などバージョンアップと新製品投入などで対応する。

 ユーザー向け保護領域では、Office 365向けセキュリティ対策の総合ソリューションを提供する。運用管理の負担を軽減するクラウド型の「Trend Micro Security as a Service」の拡充、パートナー企業向け運用管理ツール製品の拡充も行っていく。

 クラウド&データセンターセキュリティ領域では、サーバ向け総合セキュリティソフトウェア「Trend Micro Deep Security」に新しい技術に搭載して、環境に迅速に対応する。具体的にはハイパーバイザ「vSphere vSphere 6」対応、ネットワーク仮想化「VMware NSX」との連携強化、Microsoft Azure向けクラウドコネクタ、SAP対応のミドルウェアのセキュリティ強化などを行う。パートナーとの販売連携もさらに強化していく。

2015年提供予定の製品やサービス
主な機能名称提供予定
カスタムディフェンスネットワーク監視Deep Discovery Inspector250新製品4~6月
自治体向けマイナンバー対策マイナンバー向けサンドボックス新製品4~6月
可視化センサDeep Discovery Endpoint Sensor(仮称)新製品4~6月
標的型メール対策Deep Discovery Email Inspectorバージョンアップ4~6月
脅威分析Deep Discovery Analyzerバージョンアップ4~6月
ユーザー保護の徹底クラウド型メールセキュリティHosted Email Securityバージョンアップ4~6月
クラウド連携型セキュリティアプライアンス(中小向け)Cloud Edge50新製品4~6月
クラウド型ウェブゲートウェイInterScan Web Security as a Service新製品4~6月
クラウド連携型セキュリティアプライアンス(中堅向け)Cloud Edge300新製品10~12月
情報漏洩対策Cloud App Security(仮称)新製品7~9月
クラウド上のデータ暗号化Cloud App Encryption(仮称)新製品7~9月
クラウド&セータセンタークラウド・仮想サーバ保護Deep Security 9.6バージョンアップ7~9月

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  4. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  5. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]