バックアップのあり方が大きく変わろうとしている。データ量の急増、クラウド利用によるインフラ管理の多様化、シャドーITなどの課題が山積する中、IT部門はバックアップにどうのぞめばいいのか。2月25日に開催された「ZDNet Japan バックアップ戦略セミナー」(朝日インタラクティブ主催)の基調講演と特別講演の模様をダイジェストでお伝えする。
「コストに見合ったバックアップ計画を」--ディアイティ河野氏
基調講演には、IPA研究員でディアイティ セキュリティサービス事業部の河野省二氏が登壇。「事故発生時のトータルコストを下げるクラウド時代のバックアップ活用」と題して、いま求められるバックアップ戦略のポイントを解説した。
ディアイティ
セキュリティサービス事業部
河野省二氏
河野氏は、クラウドを利用する際の前提として、クラウド事業者の事故はユーザーに対策できないことを指摘。いくら有効な契約を結んでいても、事故が起きたあとの経済的な問題しか対応できないためだ。その意味では「利用者にできることはバックアップだけであり、効果的なバックアップを考え、クラウドサービスを活用したビジネスを最大限に実施することが重要だ」とした。
バックアップを取るうえでまず考慮すべきなのが「最大許容停止時間」だ。どのくらいの間、サービスが止まっても影響がないかを考えることから始めることで、コストの最適化につながるという。
続いて考慮したいのが、時間内に戻せるかどうかだ。いざリストアの段になって、データが壊れていた、データが足りないというケースは少なくないという。そこで、バックアップデータは有効か、リストア手順は有効か、定期的にテストを行っているかをチェックしておく。
データが手元にないクラウドの場合はなおさらだ。SaaSでは、バックアップの対象として、データだけでは不十分なケースもあるため、サーバまるごと取得できるかなどを確認しておく。データ量も課題になる。クラウドでは特に大きなデータはダウンロードできないケースが多いことに注意する必要がある。
「クラウド時代のバックアップはローカルに置くだけでは計画できない。たとえば、ファイルだけでなく、ログファイルのダウンロードも必要。クラウドのバックアップはクラウドに置くことも有効。プロバイダーとユーザー間のネットワークより、プロバイダー間のネットワークのほうが高速だ」(河野氏)
そのうえで河野氏は、効果のあるバックアッププランをいくつか挙げ、ポイントを紹介した。まず、サーバまるごとのバックアップは難しいため、OS、アプリケーション、設定、データのうち、どのような単位をバックアップするかを決めることが大切だとした。手間がかかる場合は、3重に冗長化したクラウドストレージを利用し、バックアップをしないという選択肢もありだという。
SaaSやPaaSの場合は、設定とデータをバックアップすることになるが、その際には、サイズに応じてローカルで取得したり、形式をXML形式などにして他のアプリケーションでも使えるようにしたりすることがポイントだ。このほかにも、用途の決まったサーバであれば、テンプレートを構築したり、データを別サーバとして設計して、一元的なバックアップを取得したりする方法も有効だと説明した。
「バックアップはどこまで実施しても心配が尽きない。容認できるラインを作り、コストに見合った方法をとることが重要だ。クラウドを活用したバックアップもコストパフォーマンスがよい。バックアップデータを共有して他のサービスで利用するといった、クラウド時代ならではの活用も考えたい」(河野氏)