IBMとThe Weather Companyはビッグデータとクラウド、モノのインターネット(IoT)を使って、企業向けの気象予測を改善しようとしている。
両社が新たに結んだ提携の一環として、The Weather Companyは同社の大規模な気象データサービスプラットフォームを「IBM Cloud」に移行して、そのデータをIBMのアナリティクスサービスおよびクラウドサービスと統合する予定だ。
この提携は、クラウド市場で競争が激化していることを反映してもいる。The Weather Companyは、Amazon Web Services(AWS)とも密接なパートナー関係にあり、The Weather Companyの最高情報責任者(CIO)兼最高技術責任者(CTO)のBryson Koehler氏は、米ZDNetに次のように語っている。「私はマルチクラウドという考え方を信じており、本格的なクラウドベースのビジネスやアプリケーションは、どのクラウドを使うかに依存せずに構築される必要があると考えている」
同氏によると、The Weather Companyは「過去3年間、この方針をとってきており、そうしてきたからこそ、われわれのデータサービスプラットフォームを『IBM SoftLayer』上に展開できた。そうすることで、われわれはIBMとともにビジネスや戦略的な機会を強化し、AWSだけでは実現できなかったことを成し遂げようとしている」という。
IBMの指摘によれば、気象は企業の業績にとっては唯一最大の外的変動要因であり、「米国だけで年間5000億ドル近くの経済的損失」をもたらしているという。
しかしIBMによると、大きな問題の1つは、(コンピュータの大規模化と高性能化、そしてソフトウェアの高機能化のおかげで)気象の予測が常に正確で詳細になってきている一方で、企業のシステムでは「一般的に、毎日が同じ状態であると仮定されている」ことだという。結果として、近い将来に極端な気象による混乱が生じることが分かっていても、「必ずしもそれが業務上の対応を行うきっかけにはならない」。
IBMとThe Weather Companyは、気象情報のような従来のビジネスデータと、両社が言うところの「前例のない数の、IoTに対応したシステムとデバイス」を組み合わせれば、企業における意思決定を根本的に変えることになると考えている。
IBMとThe Weather Companyのパートナーシップは、IBMがIoTとクラウドのサービスに対して行う総額30億ドルの投資の一環であると、IBMはプレスリリースで明らかにした。
大量のセンサ
モノのインターネットとクラウドコンピューティングを組み合わせることで、10万基以上のセンサと航空機のほか、「何百万台ものスマートフォンとビル、さらには移動車両」を活用して、情報を集めることができる。両社は、The Weather CompanyのBtoB部門であるWSIが、数千のソースからのデータを処理して、世界中で約22億カ所の独自の予測ポイントに対応するとしている。WSIは「気象現象が活発な日には、平均して1日100億件以上の予測を行う」。
WSIは、その気象データプラットフォームをIBM Cloudに移行させることによって、「世界最大のクラウドベースアプリケーションの1つ」と同社が考えるプラットフォームの成長を加速できると期待している。
IBMとWSI/The Weather Companyは、以下の3つの領域でクラウドサービスを提供することを目指している。
気象向けの「Watson Analytics」:IBMとWSIは、「Watson Analytics」などのIBMのアナリティクスプラットフォームを活用して、過去およびリアルタイムの気象データと、ビジネス活動や意志決定プロセスの統合の実現を目指す。両社は、保険、エネルギーおよび公益事業、小売業、物流などの業界向けソリューションを共同で開発する予定だとしている。