小売業界の破壊と変革

小売業界の破壊と変革--デジタル化とグローバル化の大波

江川恭太(アクセンチュア)

2015-04-15 07:00

 小売業界が大きな転換期を迎えている。底流にあるトレンドは、情報など、さまざまな事象のデジタル化を指す「デジタリゼーション」である。デジタリゼーションによって消費者の購買活動が変化し、業態を超えた競争も激化していく。

 これは、IT部門にとっても無視できないトレンドである。消費行動の変化に対してスピーディーに対応するために、基幹システムとフロントエンドの各種システムを統合すること、組織や機能を適切に配置することなどの高度な変革が求められるからだ。

 これまで成功を収めてきたビジネスモデルでも、新たなビジネス環境に適応できない企業は淘汰されていく。昨今バズワードとなっているオムニチャネルという言葉もデジタリゼーションの象徴である。

 デジタリゼーションと同じくらい大きなインパクトをもたらすトレンドは、グローバリゼーションである。グローバリゼーションへの対応の必要性が経済全体で唱えられるようになって久しいが、当然小売業にとっても例外ではなく、今後も重要なアジェンダとなる。世界中の多くの小売企業は、自国市場の成長が飽和状態であることや、新興国における市場の拡大や魅力度の向上を理由に、グローバルでの事業拡大を経営目標に掲げている。2025年には世界の消費金額の半分以上をインド、中国、ブラジルのような新興国が占めるようになると予測されている。

 一方で、同時に多くの小売業にとってグローバリゼーションは頭を悩ます原因ともなっている。アパレルや家具といった専門性の高い業態では、多くの成功企業が見受けられる一方、食料雑貨を扱うグローサリー小売業界では苦戦を強いられている企業が多い。食品業界では、ローカル市場における供給元開拓や流通網の確保も小さなエリア単位でそれぞれ構築が必要となる場合が多く、効率的なオペレーションが困難となりがちだ。

 結果、コスト競争力という観点で地場小売企業との差別化ができず収益化に苦労する。ローカルニーズに合うような独自の顧客体験の提供や、規模の効果が活かせるようなオペレーションの構築といった工夫が必要となる。

デジタリゼーションによる競争の激化

 グローバリゼーションで成功できなくとも淘汰にはつながらない。成長の抑制はあるが、自国市場で生き残り続けることができる。しかし、今度のデジタリゼーションの流れはそういうわけにはいかない。業界や業態を超えて競争が激化するからだ。自国内での競争の激化はさることながら、デジタリゼーションは国境を越えた競争も誘発する。

 実店舗での販売がこれまでの消費者との接点の中心であり、小売業がその役目を担っていたが、デジタリゼーションにより消費者へリーチする方法が多様化している。小売業は実店舗だけでなくさまざまなチャネルを駆使して消費者とこれまで以上に多くの接点を持ち、購買を促すような動きが活発になる。

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