例を挙げると、総合スーパーやスーパーマーケットによるネットスーパー参入、オンラインチャネルを通じたコンビニエンスストアの宅配サービス、薬事法改正による薬のネット販売などだ。Amazonというネットビジネスの巨人もその顧客接点を最大活用し、取り扱いカテゴリを拡大しつつある。米国ではAmazonFreshとして生鮮食料品のオンライン販売を開始しており、既存小売業者にとって大きな脅威となっている。
このような販売チャネルの多様化だけではなく、より顧客を知るためにソーシャルメディア上の膨大な消費者の声を分析する「ソーシャルリスニング」を活用する企業も増えている。 WalmartはシリコンバレーにWalmartLabsという専門機関を設立して、ソーシャルメディアの顧客の声をマーケティングに応用している。
また、消費財メーカーも消費者と新たな接点を持つことで、何を欲しがっているのか、どのような「体験」を望んでいるのかを、より詳細に知りたいと考える。先進的な企業はデジタリゼーションに軸を置いた顧客体験の再定義を始めている。新たな顧客体験を創出すべく、サービスモデルや事業モデルの変革により、ターゲット顧客のロイヤルティを高め、差別化を図ろうとしているのだ。
Procter & Gamble(P&G)は独自のECサイト「P&G Shop」を構築しており、Facebookのファンページとも直結させて顧客とのダイレクトな接点を獲得している。2013年にはAmazonとの戦略的提携を開始し、より効率的で広範囲な販売網を構築して顧客へのサービスレベルを上げようとしている。
また“EGRP(Electronic Gross Rating Point)”と呼ばれる指標を定義して消費者へのリーチを測定し、デジタルマーケティング効果を最大化するよう取り組んでいる。 Walmart同様、ソーシャルリスニングを活用するメーカーも増えている。例えばサントリーでは「お客様センター」に集まる年間10万件の声に加え、Facebook、Twitterなどソーシャルメディアから年間1000万件の声を集め、テキストマイニングにより、商品企画や商品開発、マーケティングに活かす取り組みを開始している。
このように既存のチャネル以外での新たな顧客接点が模索されている。小売業だけでなく、デジタルを活用することで実店舗を持たない消費財メーカーでも、顧客へのリーチが容易になっているのだ。