「市場投入までの時間を大幅に短縮した。以前はインフラストラクチャの展開に99日を要していたが、今では分単位で完了できる」(O'Donovan氏)
また、FTは先ごろ、データウェアハウスを「Amazon Redshift」に切り替えた。Amazon Redshiftは、少しカスタマイズしただけで、以前使っていたマネージドサービスより80%低いコストで全く同じビジネス機能をサポートしている。さらに、一部のクエリへの応答速度も90%以上向上した。
レガシーインフラストラクチャの管理
他社製のものに頼るのではなく、自社のクラウドインフラストラクチャのビルディングブロックを自社で管理するようにしたことで、FTは「Cisco UCS」サーバとAWSで稼働する社内仮想マシンの間でアプリケーションを以前より簡単に移動できるようにもなった。
大規模な社内IT資産を保有してきた企業にとって、そうしたレガシーインフラストラクチャをクラウドとともに簡単に管理できることが重要だと、O'Donovan氏は言う。
同氏は、「レガシーを関与させる方法を見つけ出す(ことが重要だ)。ハイブリッドパネルはそれを実現する。Amazonのインフラストラクチャも当社のインフラストラクチャも同じに見えるほど薄いインターフェースだ」と述べ、EC2上で「Windows Server」を実行する仮想マシンに「Active Directory」を統合した、と付け加えた。
「同じに見えるので、ユーザーは非常に簡単に利用することができ、以前のようにどこに何があるのかを気にしなくてもよくなった」(同氏)
自社のクラウドインフラストラクチャを管理できるようになったため、FTはさまざまなものの破壊を試みて、自社の耐障害性をテストすることも可能になった。これは、Netflixの「Chaos Monkey」ソフトウェアで有名になった概念だ(編集部注:Chaos Monkeyは、米大手映像配信サービスのNetflixが開発したクラウドインフラ向けの耐障害性テストツールで、2012年にオープンソース化されている。NetflixのシステムはAWSで大規模に運用されているが、Amazonが2014年9月に、EC2インスタンスをリブートするメンテナンスを実施した際、このツールを活用していた同社が問題なく運用を継続できたという)。
「われわれは『Chaos Snail』を所有している。これはChaos Monkeyがベースだが、さらに厄介で、停止させるというより動作速度を低下させる。このソフトウェアを開発した人たちは、開発チームに恐怖を与えるために、コードを記述する作業を大いに楽しんだ」(同氏)
O'Donovan氏によると、現在は特定の業界を専門とするプロバイダーが担っている役割を引き継ぐことのできる汎用インフラストラクチャサービスが、AWSなどの主要クラウドプラットフォームで、どんどん利用可能になっているという。
「それによって、われわれのあらゆるコストモデルが変わる。コンテンツ配信ネットワーク(CDN)が必要なのかどうかさえ、もはやよく分からない」(同氏)
「Amazonの配信ネットワークをフルに活用して、Amazonのプラットフォームのあらゆる場所に動画を移動することも可能だ。以前なら、大変な作業で、速度も遅かっただろう。しかし、同社には強力なバックボーンがある。ニューヨークで撮影した素材を香港で編集することも可能だ。それは、われわれにとって重要なことである」(同氏)
コンテナ化
未来を見据えるO'Donovan氏は、コンテナや「Docker」をもっと活用したいと考えている。コンテナはより軽量な仮想化技術で、マシン間でのアプリケーション移動を簡素化する。Dockerはコンテナ内でアプリの開発と展開を自動化するソフトウェアだ。
「特定のクラウドに依存しないこと、そして、複数の開発環境を移動してさまざまなものを非常に迅速に展開できるということに関して言えば、コンテナは本当に素晴らしい。コンテナはソフトウェアで定義されており、開発者は多くのことを管理できる。次に目指す場所はコンテナだ」(同氏)
Amazonは社内とAWSにホストされたコンテナの両方を管理できる単一のコントロールパネルを提供しているため、コンテナに移行すれば、FT社内とパブリッククラウドのインフラストラクチャ間のつながりがさらに強固になる可能性が開ける。
「それが実現すれば、自社のデータセンター内にAmazonを持つことに近づく。非常に興味深いことだ。『大規模なAmazon環境にも、自社のローカルAmazon環境にも、それを移動することができる』と言えるようになるだろう」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。