クラウドの興隆がもたらす「サービス化」の波 - (page 3)

Stilgherrian (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-04-10 06:15

 Goss氏は「Concur TechnologiesのシステムからNetSuiteのシステムに旅費データを移送する場合、ウェブサービスやAPIの使用が最も簡単な方法であり、これにより非常に堅牢な仕組みが構築できる」と指摘するとともに、「もう1つ重要な点がある。それはこういった仕組みが実装されるのは、顧客が『そのような連携を実現したい』と希望した場合のみになるという点だ。つまり、実装に向けた最終的な決定権は顧客が握っているわけだ」と述べた。

 しかし、自社の中核システムを他社のシステムに開放するということは、注射針の使い回しに似た危険を伴う。システム同士によるデータの注入が発生するわけだ。Intralinksのフィールド最高技術責任者(CTO)Daren Glenister氏によると、信頼にまつわる問題の答えは綿密なテストと透明性の確保の相乗効果にあるという。

 Glenister氏が豪ZDNetに語ったところによると、「世の中にはデータセンターのセキュリティ監査を実施させてくれないベンダーが数多く存在する。何故だろうか?セキュリティに対する取り組みの質を高めていきたいのであれば、自らに弱点があるかどうかを実際にその目で確かめ、必要に応じて何らかの対処がとれるよう、できるだけ多くの人々に監査を許すことだ」という。

 「これは単なるわれわれの宣伝文句ではない。(中略)Intralinksは顧客が希望した時にいつでもペネトレーションテストを実施できると契約に明記しており、そこから得られた知見から弱点を探し出し、それらを修正できるようにしている」(Glenister氏)

 「しかし市場には自らのデータセンターに対する監査を許そうとしないベンダーが数多くある。大規模ベンダーであってもそうだ。SaaSベンダーになろうというのであれば、自らの(セキュリティに対する)日々の取り組みの質を高めることに興味を持たなければならない」(Glenister氏)

 高いコンプライアンスが要求される業界向けに、セキュアな企業間コンテンツ管理ツールとコラボレーションツールを提供しているIntralinksには、同社のシステムがセキュアであると証明してほしいという声が既に多く寄せられるようになってきているという。

 Glenister氏は「われわれの元に寄せられる要求はどんどん高まってきており、特に大手銀行からの要求が顕著になっている」と述べたうえで、「コンプライアンスの制定に係る主要機関は監査の実施を求めている(中略)こういったケースは今後も増えていくはずだ。われわれもそのことを実感している」と述べた。

 この動きが向かう先を見定めるには、JPMorgan Chaseに降りかかった大規模な顧客情報流出事件を受けたニューヨーク州の対応を見るだけで十分だろう。ニューヨーク州金融サービス局の責任者は、同州の営業許可を有している銀行に対して厳しいサイバーセキュリティ規制を課すことにした。Financial Timesの報道によると、米連邦政府から許可を得ているJPMorganは同規制の対象外だが、Credit SuisseやBNP Paribas、Santanderは適用対象となっているという。

 Glenister氏は「これはニューヨーク州に端を発する話かもしれないが、すべての大手銀行に同様の規制が適用され、やがては国際的な銀行すべてにも影響が及ぶだろう。SaaSベンダーはよりオープンになる必要がある」と述べた。企業は自らのSaaSベンダーにさらなる説明責任を果たさせる必要に迫られるだろう。同氏は「説明責任を果たすには、SaaSベンダー自身が監査を実施するしかない」と続けた。

 そして、より多くの企業が自社システム内に決済処理を統合するようになれば、銀行もSaaSベンダーに対して厳しい態度をとるようになる。

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