日本オラクルが4月9、10日に開催しているユーザーイベント「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」の初日の基調講演には、米Oracleの取締役会経営執行役会長で最高技術責任者(CTO)のLarry Ellison氏が登壇した。
その後のパネルディスカッションでは、Ellison氏とともに、パネラーとしてNTTデータの岩本敏男氏、NECの遠藤信博氏、富士通の山本正已氏、伊藤忠テクノソリューションズの菊地哲氏という、日本を代表するIT企業の社長を迎えた。
冒頭、それぞれクラウド戦略を説明する時間が設けられたが、巨大企業が5社集まったとは思えないほど、各社の向いている方向に共通点があった。
モデレーターを務めた日本オラクル社長の杉原博茂氏は、冒頭で日本における人口減少が深刻化していることに触れ「ITを利用して一人当たり生産性を高める必要がある」と切り出した。
これに応じる形で、NECの遠藤氏は「世界的な人口増が見込まれる中で、水や資源の不足が考えられる。安定した社会インフラの構築にICTカンパニーが貢献できるのではないか」と述べた。
富士通の山本氏も「社会にどう貢献するかが大事であり、結局重要なのはアプリケーションだ」との考えを示す。具体的に、医療分野や農業分野のビジネスをITで変革していくといった取り組みを紹介した。
NTTデータの岩本氏は、米国で事業をする際に「デジタルワールドやデジタルユニバースを誰もが念頭に置いていることが分かる」と話す。デジタルワールドとはすなわち、IoTなどで語られるようになった、あらゆるモノがつながる世界を指している。
「CPU、ストレージ、ネットワークの性能が指数関数的な速度で伸びている」(岩本氏)
この“指数関数的”という言葉が、このセッション全体にかかるキーワードになっていった。直線的だと「1、2、3、4、5」と進むところ、指数関数は「1、2、4、8、16」と増えていく。よく言われるのが、初日に1円を貯金し、その後毎日、前日の2倍の金額をためるといった話。計算機を叩くと驚く。10日目の金額は512円だが、20日目には52万円、30日目の金額は5億円を超える。
ストレージやネットワークなどの技術だけでなく、ITの適用領域も農業、医療、社会インフラ領域などを舞台に指数関数的に広がりつつあるのではないか――そんな問題意識が登壇した5社の中で共有されていたように見えた。
例えば、農地において、湿度を管理し、収集したデータを分析して水やりの自動化、収穫を最大化するといったことをITを使ってやろうとすれば、多数のセンサやデータベース、分析系のソフトウェアなどが必要になる。Ellison氏も、Sun Microsystemsを買収した理由を聞かれて答える際に、サーバなどだけでなくセンサ周りを支えるJavaの技術を使い、農業を支えていくといった利用方法に触れた。
ITの利用範囲の拡大を考える上で、指数関数的な視点を持っていないと、市場の予想以上の急拡大といった大きな流れに乗り損ねてしまうかもしれない。
伊藤忠テクノソリューションズの菊地氏は社員に向けて「今後需要の大きな拡大が見込まれる中で、ITの会社で働けるのは幸せだ」と話しているとのこと。
日本の巨大IT企業のトップがいずれも「指数関数的変化」というキーワードに反応した背景には、そんな事情があるのかもしれない。