MAは小さく始めて実験を繰り返す
尾花氏 何かしらイベントを中心というか、キャンペーンとして予算を取った中に、ツールの活用も入っているというパターンもきっとあると思います。そのパターンではキャンペーンが終わった瞬間にツールを解約することがあり得るような予算の取り方になるのでしょうか。
笹氏 まず最初の時点で、小手先で調整してもらうことはあります。ただ、今セールスフォースが入っている日本の事例を見ていくと、マーケティング以外に消費者へのサービスの向上という目的があるものが多い。そのため、オンラインメディア上の接点のインフラにMAを使うケースが、特に欧米で多いと感じます。
セールスフォース・ドットコム Salesforce Marketing Cloud 営業・ソリューションコンサルティング 執行役員 笹俊文氏
尾花氏 つまり顧客コミュニケーションのインフラになるため、別にマーケティングだけのコミュニケーションインフラではなくなるということですね。
東氏 (ネットバンキングなどの)銀行であれば、残高がないという通知は日本ではメールでしか来ないですが、欧米ではユーザーがメールやショートメッセージなどを選べるようになっています。そういう(メーラーのような)「発射台」として使われることが結構多く、日本でも同様です。
考え方も費用の取り方もかなり変わってきていて、顧客にとっては新しい概念だと思います。メッセージもショートメッセージも同じインフラで実施するというのは新しい考え方だと思います。
尾花氏 オラクルだと、例えばDMP「BlueKai」やEloquaを連携させるなど、実験的なお金の使い方はありますか。
東氏 やはり上層部を説得する上で、何に貢献するか、売り上げが向上するとかパイプラインの数を増やしますとか、いくらのROIになるという話を詰めていく必要はあるのですが、顧客もいきなりその絵が作れるわけではないと思います。
そこでまず、小さくはじめながらトライアル的に使いながらKPIの設定などをケアしていただくというのが多いですね。
岡本氏 これはSaaSベンダーに共通して言えることだと思うのですが、最初はそんなに大規模に展開し過ぎない、予算も必要最小限にとどめるというのが、結局は長続きするいい付き合い方なのかなと経験的に思います。
実際に数万円から始められるプロダクトもありますし、それで機能不足だと思ったら、上位のプロダクトにスイッチできます。そのスイッチングコストもSaaSだとだいぶ安くなってきており、少なく小さく、しかし早く始めるというのが、長続きで成果が出るやり方なのかなと感じます。
尾花氏 それはある意味言い古された、PDCAを高速に回していきながら大きくしていきましょうということに通じる考え方なのでしょうか。
シナジーマーケティング SFBD室 Synergy!LEAD プロダクトマネージャー 岡本亨氏
岡本氏 そうですね。どこの業界でも各プレイヤーの企業はデジタルマーケティングにもっと予算を配分したり、デジタルマーケティングを強化しているという企業が多く競争している中で、早く始める、早くオプティマイズするという考え方が重要性を増してきている。
その中で小さく早く始められるクラウドベンダーのプロダクトは、まさに受けが良くて普及している大きな要因なのかなと思います。導入の調整と、運用の最適化のどちらも早く回せる、コストも小さくやれるというのがMAが注目されている理由のひとつだと思っています。
福田氏 一方、初めから導入や利用のイメージがある場合は小さく制限する必要はないと思います。ツールを使い倒したいなと思う人がいることが一番いいと思うんですよね。こういうことをやりたいというイメージがある人に対して最初に機能を限定してしまうと、結局効果を生まない。
各社ツールの特性があります。ツールの機能を知っていく中で、あ、こういうことができるんだったらこれが実験できるよね、という風に、新しいキャンペーンなどの取り組みが生まれてくというのが一番成功につながるタイミングだと思います。そういう点ではツールに好奇心を持ってくれる人がいると、本当に成功しやすいと思います。