業界を越えて連携する企業が成功する--アクセンチュア報告書に見るITの可能性 - (page 2)

三浦優子

2015-04-10 07:30

 (4)のインテリジェントな企業とは、膨大なデータとスマートな仕組みを活用することでビジネスを生み出す、コグニティブコンピューティングを実践する企業を指す。ソフトウェアインテリジェンスで何を実現できるのか、サーモスタットの例を挙げた。

 人間は室温が20度未満となると寒さを感じて室温を上げるために暖房を入れる。このルールをサーモスタットが学習することで、温度が20度未満になると暖房を入れるというルールが生まれる。さらに、室内にあるルームランナーを使うと、人間が15分後に温度を下げるという行動を繰り返し行うことを学習し、ルームランナーの利用が始まると15分後に室温を下げるというルールができる。さらに、熱がある時には体温の高さ、画像解析による顔の様子などから室温を上げるといった、コグニティブコンピューティングが実践される。

 この結果から、労働集約的な業務プロセス、手動アップデート、個別化が必要なアプリケーションにソフトウェアインテリジェンスを導入するところからスタートするべきと提言する。まず技術に対する理解、スキルの確保といったところからスタートし、導入後のレビュー、トレーニングといったことを継続的に行う体制を作るべきだとしている。

 (5)のワークフォース再考は、人間と機械の連携がもたらすコラボレーションで機械が雇用を奪うのではなく、人とマシンの協働による新しい価値を生む世界を指す。ロボットだけでなく、ドローン、ウェアラブル端末、スマートデバイス、パワースーツ、人工知能(AI)といった機械との協働でより安全で高効率な仕事が実現できるという。

 事例としては、ロサンゼルスタイムスでは日本と同様に地震が起こる地域であることから、地震が起こった際には短時間にニュースが求める人が多いことに着目。地震が発生した時には自動的に公的な情報を収集し、それを記事に仕立てる。最終的には人間が確認するものの、一から書き上げる場合に比べ、短時間にニュース速報を提供でき、ほぼ3分で記事を作成したという。

 こうした分析を受け、「機械との協業はこれからの日本の追い風になる」と提言する。機械との協働が日本企業のお家芸である製造業の復活、労働力不足対策、生産性向上につながることから、機械との協業を前提にした製品やサービスの投入、機械を使いこなすジェネラリストから協業を前提としたワークシフトを行う専門家へのシフト、新しい人事制度などに取り組んでいくべきだと提言している。

 最後のまとめとして、Weエコノミーを実現するために、企業は顧客の振る舞いを知るタッチポイントは十分か、ビジネスがもたらす成果とは何か、その成果を生むために必要なパートナーは誰か、デジタルの力を最大限に活かす仕組みは整っているかといった問いかけを行うべきだと指摘する。

 アクセンチュア自身も、CSRの一環として横浜市で市民の声を分析、マッピングすることで地域別の課題を見える化する「LOCAL GOOD YOKOHAMA」という取り組みを行っていることを紹介。データを分析して抽出された課題をマッピングし、ニーズに対してそれに答える人がいればマッチングができないのかといった模索を行っているという。

 「Weエコノミー実現で境界線を越えたソーシャルイノベーション実現が可能となっていく可能性がある。社会的ニーズと企業の利潤追求の両立が実現できる可能性があるエコシステムが誕生することも考えられる」(立花氏)と新しい方向が生まれると指摘している。


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