エンタープライズに必要な可用性と拡張性で浸透するNoSQL分散DB「Cassandra」 - (page 3)

木本吉信 (DataStax)

2015-04-16 14:54

 以下では、実際にCassandraを採用している企業が、どういう課題に直面し、Cassandraを採用した理由、そしてそれによって課題がどう解決されたかをいくつか紹介します。

バックエンドストレージを統合したCredit Suisse

 Credit Suisseは、同社の投資銀行とトレーディングの事業におけるポートフォリオリスク管理を可能にする「Hippo」というプロジェクトでCassandraを利用しています。2008年の金融危機以降に、同社は個別に運用していた数多くのシステムを統合するという合理化へ向けた施策を開始しました。それにあたっては、共通利用するバックエンドストレージを選択する必要に迫られました。

 バックエンドを統合することとなると、その障害はすべてのシステムに波及するという課題が生じます。これを解決するために、またトレーダーがいつでもリスク情報を照会できるように、100%の可用性が求められました。

 そして段階的に統合を進めていく中で、ポートフォリオの増加にも対応できる高いスケーラビリティも求められました。規制当局の要請により、データ保護と維持も要件となりました。Cassandraはまさにそうした要求に応えるものでした。最終的に同社は4人のチームで世界の600人を超すトレーダーを支えるシステムを組み上げ、運用を開始しています。

決済システムに活用したING

 オランダに本社を置く世界有数の金融機関であるINGは、RDBを利用してネットの決済システムを運用していましたが、障害が発生して決済ができなくなるという事態が生じたことを受けて、まずは可用性確保の観点からCassandraを採用する方向に進み始めました。互いに地理的に離れている複数のデータセンターにノードを配置して運用し、任意のノードに接続して利用できることも重要な要素でした。

 さらにSQLに似たCQLが利用できる点も開発者にとっては有利でした。決済システムである点からデータの整合性確保は大きな挑戦でしたが、調整可能な整合性、トランザクションログ記録と再生の仕組み、分断耐性のあるCassandraの特性も生かしながら、さまざまな工夫をすることで、それを乗り越えています。

スマート温度計のデータ処理に活用するBritish Gas

 British Gasは1800年代に設立された古い会社ですが、現在は自由化が進んで、ガスにとどまらず電気も供給している英国のエネルギーと家庭向けのサービスの会社です。自由化は必然的に競争をもたらし、他社との差別化のためにモバイルを含めたさまざまなネットサービスの展開をもくろんでいます。

 British Gasは、スマート温度計を運用するConnected Homes事業を運営しており、スマートフォン経由でさまざまなことができるようにしています。このアプリの人気は高く、現在30万人の顧客が設置したスマート温度計から送られてくる膨大な量のデータをCassandraに取り込み、Sparkでそのデータを高速に処理し、温度に基づいて効率よく冷暖房をコントロールできるようにほぼリアルタイムのフィードバックをアプリに提供しています。

 しかし、それだけにとどまらず、今後顧客のボイラーにスマートセンサを設置していき、データを集めて学習を行い、将来的にはボイラーの故障を予測するアルゴリズムを開発し、顧客や保守要員に通知を送れるようにすることを目指しています。

センサデータの処理に活用

 Riptide IOは、建物やエネルギープラントに無数のセンサを設置して管理運用し、そこから集めたデータを使ってコストの節約に結び付けています。

 目指していたのは、時系列のセンサデータを取り込んでエネルギー分析に使用すること、低コストで大規模ながら高いパフォーマンスを達成すること、そして少人数のチームで本番稼働まで持っていくことでした。そのため、時系列データを管理し、スケーラビリティと100%のアップタイムを確保し、クラウド上に配備できるCassandraが選ばれました。

 結果として、建物に入っている小売店はエネルギーと運営コストを大幅に減らせ、少人数のチームながら2カ月でアプリケーションを市場に投入でき、従来のRDBに比べ総所有コスト(TCO)を67%減らすことができました。

サービスのほとんどに活用するNetflix

 2012年に21~24時に米国におけるインターネットの通信量の3分の1を占めるまでになった動画配信サービスを提供するNetflixは、そのサービスのほとんどでCassandraを利用しています。

 従来RDBを使用していた際に単一障害点に起因するサービス停止を経験してからは、100%のアップタイムを複数のデータセンターをまたいで提供できるCassandraを採用し、1日あたり21億件の読み取りと43億件の書き込みをAmazon Web Services上の数千台のノードでさばいています。そうしたデータには、再生や停止、早送りや巻き戻しなどの動画視聴者の操作履歴などが含まれ、これらのデータに基づいてレコメンデーション等を提示してさらなる視聴につなげています。

 この秋には日本上陸も予定されていますが、同社の各国への進出は、データベース用のクラスタを各リージョンにすばやく構築できるCassandraに支えられています。

1日数十億件を処理するeBay

 世界最大のオンラインマーケットプレースを提供するeBayは、取扱総額が754億ドルにのぼり、1億1200万の利用者が4億を超える商品を出品しています。1日あたり数十億件の書き込みや読み取りが生じる中で、同社は従来のRDBの手法では対応できない処理量と速度、そしてスケーラビリティをCassandraを含むさまざまな技術要素を利用して対応しています。

 結果として、250Tバイトに及ぶ膨大なデータを格納し、毎日60億件の書き込みと50億件の読み取りを行い、正確でパーソナライズされた検索を低遅延で利用者に提供し、ピーク時にも100%のアップタイムを保証しています。

データ統合でAPIを活用するTarget

 Targetは全米で1900を超える店舗を持つ米国第2位の小売企業です。同社は複数のシステムに散らばっていたデータを統合し、ピーク時にも耐えうるスケーラビリティを確保し、データにアクセスするためのAPIを提供することが課題でした。

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