これまで2回に分けてITに関する今年の日本とベトナムの展望についてお伝えしましたが、今回は、ベトナムの中でも最近注目されている都市の1つであるダナン市について、ITを取り巻く状況を取り上げてみたいと思います。
ベトナム中部地域の最重要都市
これまで日本企業のベトナム進出は、北部のハノイやハイフォン周辺、南部のホーチミン周辺が主な候補地となっていました。両地域とも、日系工業団地を含め数多くの工業団地がすでに建設され、日系企業の進出も相次いでいます。
ただ、このような地域では優秀な人員の奪い合いになっていることもあり、従業員の定着率向上や人件費高騰への対策に苦慮している企業も増えてきているようです。当然、各地域内でも差がありますので、状況がそれほど深刻ではない企業もあるようですが、「ベトナムで操業しつつ、横目でベトナム内の他地域やインドネシア、タイ、ミャンマーといった他国の状況も並行して精査する」というリスクヘッジは一般的になりつつあるようです。
そのような状況の中で、2014年7月に東京(成田)からベトナム航空がダナンへ直行便を就航させたこともあり、日本国内および在ベトナム日本人にもダナンの知名度が上がってきたようです。
ダナンには意外とネオンが多く、ハノイやホーチミンと比べても引けを取らない。初めてダナンを訪れた方がこの光景を見るとダナンのイメージがガラッと変わる。
ダナンは、ベトナムに5つある政府直轄都市(ハノイ、ハイフォン、ダナン、ホーチミン、カントー)の1つで、ベトナム中部地域では唯一の政府直轄都市でもあり、港湾、国際空港といった都市インフラも充実しています。市内と近隣には工業団地が整備されており、人材供給の後背地として近隣省があるために労働力の供給も比較的スムーズのようです。また、国立の総合大学であるダナン大学をはじめとする高等教育機関も設置されており、高いレベルの理工系学生や日本語学科の学生が養成されていることも、日本企業にとっては魅力となるでしょう。
また、ダナンとその周辺地域は、美しく長い砂浜沿いのリゾートホテル群、米国人の設計によるゴルフコース、複数の世界遺産といったリゾート地としてのポテンシャルを秘めている景勝地でもあります。市内の交通状況もハノイやホーチミンほどには渋滞せず、朝晩の海風と浜風によって空気が入れ替わり過ごしやすく、長期滞在が必要な日本人も安心してのんびり暮らせる住環境と言えます。
経済状況も良好です。ダナンの1人当たりのGDPは2000米ドルを超えており、都市としての成長率も毎年2けた以上の伸び。また、ダナン市政府はベトナムの中でも政治的クリーン度が高いことは有名で、外国からの投資についても、投資局をはじめとする関係部署がしっかりと支援してくれている印象です。
当然、日本とは社会制度が異なるため、外国人にとっては不満を感じる手続きや制度もありますが、当局と投資者との風通しは良いようです。