クラウドサービス導入時に最大の障壁となるのは「信頼」である。オンプレミスサーバの運用に慣れ親しんだ企業にとり、ビジネスクリティカルなサービスをサードパーティーの手に委ねるのは、生やさしい決断ではない。まして、Edward Snowden氏の告発で悪夢が現実に変わった今、企業のCIOは極めて難しい判断を迫られている。
自社が運用するデータセンターであれば、従業員の信頼性を自分達で確認できるうえに、万が一の不正を防止する施策も自分達で管理できる。しかし、遠く離れた場所で運用されるサードパーティーのデータセンターを利用する場合、政治目的や金銭目的で不正を働こうとする従業員から、どうやって自社データを守ればいいのだろうか。
顧客を悩ませるこの問いは、クラウドサービスを提供する側も同じように悩ませている。クラウドサービスの顧客を獲得するためには、顧客の信頼獲得が必要不可欠だからだ。
そうした中、Microsoftは米国時間4月21日、クラウドサービスの新しいセキュリティ強化策をRSA Conferenceで発表した。セキュリティ強化策の目玉は、Office 365の暗号化の強化とアクセス制御の厳格化である。
現在、メールのデータはBitLockerで暗号化されたディスクに格納され、データセンターとの送受信も暗号化された状態で行われている。しかし2015年末までに、Microsoftはコンテンツレベルの暗号化も導入する。これにより、暗号化されていない状態のコンテンツに万が一不正にアクセスされたとしても、データは保護されるようになる。なお、この施策はSharePoint Onlineにはすでに導入されている。
さらに2016年には、Office 365の企業顧客は自身が用意した秘密鍵でMicrosoftのサーバ上のデータを暗号化できるようになる。顧客は必要に応じて秘密鍵を無効化するだけで、サーバ上のデータを解読不能にできる。
Office 365には、「Customer Lockbox」と呼ばれるもう一つのセキュリティ強化策が用意された。これは、Office 365サービスをオンプレミスサーバと異なるアーキテクチャで稼働させ、データへのアクセスを許してしまう可能性のある処理を、ほぼすべて自動化するものである。また、破損したメールボックスの修復など、Microsoftのサポートエンジニアが顧客のデータにアクセスする必要が生じた場合は、事前に顧客の承諾を得たうえで、サポート業務に必要な時間だけデータへのアクセスを許可する時限アカウントがエンジニアに発行される。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。