EMCジャパンは4月23日、世界のビジネスリーダーを対象にした意識調査レポート「The Information Generation: Transforming The Future, Today(インフォメーションジェネレーション:現在、未来の変革)」の結果を発表した。レポートは2014年10月、世界18カ国3600人を対象にした調査をまとめたもの。ここで言う“インフォメーションジェネレーション”とはEMCが提唱するキーワードで、オンライン環境で過ごすことが当たり前になっている消費者世代を指す。
デジタル化の進展とオンライン化が当たり前になっている技術進化でビジネスルールは恒久的に変わったことから、ビジネスで成功を収めるためには以下の5つの属性が必要だと分析している。
- 新たな機会をピンポイントに予測
- 透明性と信頼性を示す
- アジャイルなイノベーション
- パーソナライズされた固有のエクスペリエンスを提供
- 常時オンラインでリアルタイムに移動
EMCジャパン マーケティング本部長 渡辺浩二氏
マーケティング本部長の渡辺浩二氏は「現段階では、全社規模で適切に5つの属性を実現している企業はほとんどない。成功するためには、これからでも間に合う。まず、自社の強い分野に絞り込んで明確な目的を持つこと、全社規模で取り組むことを守れば、まだ十分に間に合う」と話した。
テクノロジでビジネスのルールが変わった
渡辺氏は「調査結果から結論を出して提言することが目的ではなく、データを見せてオープンに議論していきたいというのが発表の狙い。ぜひいろいろなご意見を頂きたい」と説明した。
「新しいテクノロジによるビジネスへの影響」についての回答としては、93%が「過去5年から10年間、テクノロジがビジネスに影響を及ぼしている」と答えている。96%が「さまざまな新しいテクノロジ(モバイル、SNS、クラウド、ビッグデータ)によって、ビジネスのルールが恒久的に変わってしまった」と回答した。
影響を与えたものとしては、「モバイル」という回答が66%で最も多くなった。この回答の国別動向を見ると、日本は38%なのに対し、中国は82%と、成熟市場である日本に比べ、新興市場である中国はより大きな影響を受けたと考えているビジネスリーダーが多くなっている。
「情報からの洞察がビジネスを変えると思うか」という質問について、国別認識を見ると、「変えると思う」という回答が最も低かったのが日本で45%、逆に最も多かったのは中国で85%となった。全世界平均は65%であることから、日本は世界的に見て情報からの洞察がビジネスを変えるという意識が特に低い。
「データを有益な洞察へ変える能力があると思うか」という質問では、全世界平均は71%とデータ活用能力に対し自信を持っているビジネスリーダーが多いことがうかがえる。その中で日本は23%と極端に低い。最も高い数値となっているのは中国で92%となっている。
消費者の動向に対する質問では、「テクノロジによって消費者の期待値が変わった」と93%が回答。96%が「テクノロジによってビジネスのルールが恒久的に変わってしまった」と回答し、テクノロジが消費者と企業との関係を変えたと企業側が感じていることが明確になっている。
消費者ニーズとしては、最も多かったのが「サービスへのより速いアクセス」で55%、2位は「24時間の常時アクセス」で53%、3位が「より多くのプラットフォームからのアクセス」で50%、4位が「自分だけのパーソナライズされたエクスペリエンス」で47%となっている。
こうした状況からEMCでは、企業はビジネスのやり方を新定義する必要があるとして、そのために必要なのが最初に挙げた5つの属性だと指摘する。
しかし実態としては、1.の新たな機会をピンポイントに予測について「全社で実行している」は34%にとどまり、「実行しているが全社規模ではない」が49%、「まだ決めていない」が17%。国別では日本はアルゼンチンとほぼ同じで、「全社で」は16%、「全社規模ではない」が52%、「決めていない」が33%と世界各国の中でも全社規模でできていない割合が高くなっている。
2.の透明性と信頼性については、「全社規模で実行している」が35%、「実行しているが全社規模ではない」が52%、「まだ始めていない」が14%。成熟市場が22%であるのに対し、新興市場は34%と全社規模になっているという回答が多い。業種別では、ライフサイエンスとバイオテクノロジが全社規模でという回答割合が高くなっている。
3.のアジャイルなイノベーションについては、「全社規模で実行している」は25%、「実行しているが全社規模ではない」が58%、「まだ決めていない」が17%。着手し始めたという会社が多いようだ。ちなみに、全社規模で実行しているという回答割合が多い業種は通信/マネージドサービスプロバイダー(MSP)と金融サービス。
アジャイルなイノベーションを高める方法という質問に対しては、「部門間の連携を高める」が46%、「アイデアをたくさん出すように従業員を奨励」が45%、「IT革新のための予算の増加」が41%、「グローバルな視野で考えることを支援」が38%となっている。
4.のパーソナライズされた固有のエクスペリエンスの提供については、「全社規模で実行している」が27%、「実行しているが全社規模ではない」が55%、「まだ決めていない」が18%。国別回答で日本は「全社規模で」という回答が10%と最も低く、「まだ決めていない」が41%で最も高いという結果となっている。
5.の常時オンラインでリアルタイムに稼働できるは「全社規模で実行している」が29%、「実行しているが全社規模ではない」が52%、「まだ決めていない」が19%。国別回答では日本は「全社規模で」が14%、「実行しているが」が54%、「まだ決めていない」が33%と、全社規模で実行できていない割合が高い。
ただ、こうした結果に対して渡辺氏は「全社規模で実行できている企業は決して多くはない。本格的にレースが始まるのはこれからで、今から取り組めば決して遅くはない」と指摘する。
「現段階では5つの属性全てを全社規模で適切に実現している企業はほとんどない。インフォメーションジェネレーションのニーズに応える企業になるためのレースが本格的に始まるのはこれから。情報に敏感な組織となり、全社規模で取り組んでいくことが重要ではないか」との見方を示した。
これからの成功に必要とされる5つの属性