フィンランドの雇用経済省において企業及びイノベーション部門の責任者を務めるSeveri Keinala氏は、「フィンランドはデータセンター向けの電気税を工業向け電気税と同じレベルに低減したため、フィンランドにおける電気料金は明らかに北欧で最も競争力の高いものとなっている」と述べるとともに、「それに加えてフィンランドの電力供給網は世界一安定しており、接続ポイント当たりの年間稼働率は中央値にして99.99946%となっている」と述べている。
プライバシーの問題
フィンランドは数々の利点を有しているが、複数の難題も抱えている。しかも、最大の難題は意外とも言えるところにある。この国はスウェーデンを通る光ファイバーケーブル経由で欧州とつながっているのだ。なぜそれが難題になるのかというと、プライバシー関連の問題にたどり着くためだ。
Nissila氏は「スウェーデン政府は国境を通過するあらゆるデータを捕捉する権利を有している。これはデータセキュリティの問題になり得る」と述べている。
これを受け、フィンランドはスウェーデンの呪縛から解き放たれるために、自国の国際接続網を改善する取り組みを始めている。現時点ではデータ用の海底ケーブルプロジェクト1件が承認されており、2件目も計画段階となっている。
Keinala氏は「われわれは欧州の中心地とも言えるフランクフルトまでの高速データ回線を新設しようとしているところだ。この接続は2016年に開通する予定であり、フィンランドと中欧を結ぶ通信のレイテンシを著しく低下させられるはずだ」と述べるとともに、「それに加えてわれわれは、欧州とアジアを北極海経由でつなぎ、欧州とアジアの間での高速接続を提供する『北極接続ケーブル』構想を進めている」と続けた。
フィンランドとドイツをつなぐ光ファイバーケーブルは全長約1100kmで、2016年の早いうちに運用を開始するべく現在建設が進められている。また、このファイバーケーブルは将来的に、東欧や英国、フランス、ロシアにまで延伸できるよう、柔軟な設計が採用されている。
Keinala氏は、北極接続ケーブルの実現には多くの国々からの協力を得るとともに、プロジェクトへの投資とプロジェクト管理の双方を実施するコンソーシアムが必要だと説明した。コンソーシアムになり得る2つの潜在的団体から照会があったものの、具体的な行動はまだ始まっていない。その理由は約8億ユーロという費用試算にあるのかもしれない。
国際間の光ファイバーケーブルネットワークを増強することで、フィンランドにおけるデータの独立性の問題が解決されるとともに、速度向上につながる可能性もある。上述したデータセンターのレポートでは重要な利点として、フィンランドが現在「データ分野におけるスイス」になっており、政府による監視に対する強力な法的保護の存在が挙げられている。最近、ネットワーク監視を可能にする提案もなされているが、今のところ法制化のめどは立っていない。