――三木会長は2014年の総括として「パートナーエコシステムの充実」を挙げた。新たなパートナー戦略は考えているのか。
われわれは、500を超えるテクノロジパートナーと2万5000を超える販売パートナーを擁しており、売り上げの99%はパートナー経由です。ですから、“充実”は新たなパートナーを積極的に開拓するというよりも、既存パートナーとの関係強化を目指します。具体的には、ソリューションのラインアップ拡大に伴って、新サービスや製品をパートナーと共同で販売することなどです。
今までは、サービスプロバイダーパートナーがわれわれのソフトウェアを購入し、自社のサービスに組み込んで販売していました。今後は、例えば、vCloud Airとパブリッククラウド全体の構築ノウハウを“バンドル”して提供し、新たなパートナーを獲得するアプローチも考えています。
注目される日本法人
――2015年度事業戦略説明会では、社内人材の育成に注力していく姿勢を強調した。ヴイエムウェアは、外資系IT企業の中で離職率が低い。人材育成で注力していることは何か。
現在の社員構成は、外資系企業と日本企業からの転職者が半々です。ヴイエムウェアには、外資系企業にありがちな「自分の職務領域だけやったら、あとは知らない」という空気がありません。離職率が低いということは、それだけ社内に先輩がいて、後輩を指導できる環境だということ。(日本法人で)管理職に就いている人材の70%は、長くヴイエムウェアで働いているので、自分が教えてもらったように後輩に教えられるのです。
こうした企業文化ですから、「単に製品を売って数字を達成する」という意識よりも、「ユーザー企業のビジネスをサポートし、ユーザー企業の成功が自分たちの成功である」という意識が高い。「誰かの課題をみんなで支えて解決する」姿勢が自然と身についています。これはチームワークを大切にする、日本のよい部分だと思っています。
離職率が低い理由の1つとして、社内でのジョブチェンジを積極的に推奨していることが挙げられます。私は、毎年部長クラスの社員に対し、部下の20%を新しい任務に就かせるよう伝えています。これはトップダウンの命令です(笑)。
さまざまな職種を経験することで、異なる視点でモノを見られるようになったり、柔軟な発想で課題解決する力が身についたりすると思います。ある部署では成長が感じられなかったとしても、他の部署では見違えるほど成長したという例も少なくありません。ポテンシャルを引き出して成長させることは、上司の役目だと考えています。
もう1つ、われわれは新卒も採用しています。これは三木さんが本社に掛け合って実現させたのですが、そのとき本社側でわれわれを強力にサポートしてくれたのはCEO(最高経営責任者)のPat Gelsingerでした。
彼は長年Intelで働いており、その時代から頻繁に来日していたので、日本の人材採用事情を知っていたんですね。彼はダイバーシティ経営にも積極的なので、われわれの取り組みを理解しています。実際、こうした日本式の人材育成がベストプラクティスとして海外支社にも広がっています。
――グローバルの中で日本法人はどのような役割を果たしているのか。
現在、日本の社員数人を米国本社やシンガポール(ASEAN VMware)に「転勤」という形で送り出しており、米国本社に日本のOEMベンダーなどの要望を伝えるといった任務を与えています。VMware全体にとっても日本は重要な市場であり、場合によっては、日本のユーザー企業のフィードバックで製品をカスタマイズすることもある。日本はそうしたインパクトを持っている市場でもあるのです。