情報通信技術の新たな使い方

従来型携帯端末の生産終了に関する報道とノキアによるアルカテル・ルーセントの買収 - (page 2)

菊地泰敏(ローランド・ベルガー)

2015-05-01 07:00

 さて、もう1つの話題が、NokiaによるAlcatel-Lucentの買収である。こちらも、各種の新聞、ネット系メディアで報じられており、会社の知名度やM&Aの規模から多くの注目を集めたので、記憶に残っている読者の方も多いと思われる。

 この報道の中で、目を引いたのが「Nokiaが端末市場に再参入」という表現や、英語の記事ではcome back という表現が使われていたことである。

 ご存知のとおり、Nokiaはフィーチャーフォン(スマートフォン以前の従来型携帯端末。上述の「ガラケー」は、その従来型携帯端末が日本独自の発展を遂げたために、ガラパゴス携帯と呼ばれたため、ここでは用語を使い分けている)の時代には世界の覇権を握っていた。

 しかしながら、iPhoneを初めとするスマホの普及により、その勢いは無くなり、最終的には携帯端末事業をMicrosoftに売却したのは記憶に新しいところであろう。

 そのNokiaが、端末市場に「再参入」ということで注目を浴びているのである。また、単純な再参入ではなく、ネットワーク側の機器に強みを持つAlcatel-Lucentを買収することで、端末からネットワークまでをワンストップで提供できる体制を目指すということなのだろう。現在では、Huawei (華為技術)がこの一貫体制を構築し、成功を収めている。

 しかし、この一貫体制の構築と、それに伴う携帯端末市場への再参入というのがNokiaが目指している姿なのかは疑問が残るところである。なぜか。

 Nokiaは、外的環境の変化に伴い、その事業内容を柔軟に見直すことで成長してきた会社だからである。Nokiaがゴム製品、その中でもゴム長靴の製造で成長してきた企業であることは比較的有名なことであり、その後、携帯電話市場の成長に伴い、こちらの事業を主軸においたという沿革がある。

 そのような会社が、過去の栄光を取り戻すため、時計の針を戻すような戦略を取るとは思いたくないのである。もちろん、現時点ではノキアの本心は知る由も無いが、現最高経営責任者(CEO)であるRajeev Suri氏の発言は、若干心配なものがある。いわく、「(Alcatel-Lucentとの合併により)2019年までに9億ユーロのコスト削減が可能になる」とのことなのだ。

 新たな成長路線を見出すことよりも、コスト削減のメリットを強調することに寂しさを感じるのである。

 外的環境の変化を捉えて新たな顧客価値を見出し、その顧客価値の提供に際し競合への持続的な競争優位性を構築する。これこそが戦略である。顧客の視点が抜けていたり、時計の針をもとに戻そうとしたりすることは戦略的とは言えない。

 時を同じくして報じられたこの2つのトピック。その同時性は偶然かもしれないが、日本の携帯端末メーカーとNokiaがスマホ時代の覇権を握れなかった共通の理由がそこに垣間見られるような気がするというのはシニカルに過ぎるであろうか。

菊地 泰敏
ローランド・ベルガー パートナー
大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、同大学院修士課程修了 東京工業大学MOT(技術経営修士)。国際デジタル通信株式会社、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。通信、電機、IT、電力および製薬業界を中心に、事業戦略立案、新規事業開発、商品・サービス開発、研究開発マネジメント、業務プロセス設計、組織構造改革に豊富な経験を持つ。また、多くのM&AやPMIプロジェクトを推進。グロービス経営大学院客員准教授(マーケティング・経営戦略基礎およびオペレーション戦略を担当)

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