クラウドを採用する企業は増え続けているが、パブリッククラウドの多くは、一部の業界にとっては必ずしも最適なソリューションとは言えないことが分かってきた。
このため、特定業界のニーズや規制に対応するソリューションが生まれてきている。これらの「業界クラウド」は企業に大手ベンダーやそれらのベンダーが提供するモノリシックなソリューション以外の選択肢を提供している。
AccelのパートナーであるChristian Jensen氏は、新たな成長市場のソフトウェア企業が、ニッチ市場に進出する前にまず水平的な共通のニーズを満たそうとすることは自然なことだと話す。
しかし、特定のニーズを解決しようとする企業が多くなるにつれ、それらの業界クラウドに対する投資も多くなるはずだ。Jensen氏によれば、注目すべき業界は、独自のワークフローを持ち、規制が強く、新たなデータから得られる知見から恩恵を受けやすい、大きな垂直市場のものだという。
それに加え、従来のサービスプロバイダーに対する不満の強い業界も、垂直的なクラウドサービスがもたらす変化を歓迎する可能性が高い。この記事では、もっとも多額の投資を集めている業界クラウドソリューションの分野を5つ紹介する。
1.医療
医療分野では、安全で規制に準拠したクラウドシステムがもたらす変化を受け入れる機が熟している。特に患者のカルテや診療記録へのアクセスについては需要がある。
「医者のためにあらゆるものをスキャンし、それをHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)の手順などを順守する形で安全な場所に保管できるようになれば、非常に大きい」とエンジェル投資家のPeter Shankman氏は言う。
スタートアップ企業が効果的な医療クラウドソリューションを構築できれば、患者の治療と効率を改善できるが、これはデータをより活用した医療システムにもつながる。その場合、そのデータは患者の診療記録と同じ水準の厳しいセキュリティで保護される必要がある。
「医療の分野では、データ主権はもう1つの重要な課題だ」と、Scale Venture PartnersのパートナーであるAriel Tseitlin氏は述べている。
2.保険
保険は長い間変わっていない。保険代理人は基本的に、限られた量のデータにしかアクセスしていない。
「保険の契約は長い間保険統計表を使って進められており、あまり多くのデータは使っていない」とAccelのJensen氏は話す。「自動車保険の契約時には、保険会社は住所と年齢、運転する車種しか見ない。他の要因はほとんど考慮されない」(Jensen氏)
しかし、適切な業界クラウドがあれば、保険代理人や保険会社は、運転頻度や運転のくせ、そのほか関連はあまり自明ではないが結論に影響を与える可能性のあるデータなど、より多くのデータにアクセスできるとJensen氏は言う。
もちろん、これにはIoTへの大きな投資も必要となる。データの収集と分析には、センサとネットワーク接続された自動車を連携させる必要があるからだ。Jensen氏はまた、天候の悪化が予想される時に、保険会社がドライバーに悪天候に備えるように伝えるなどして、リスクを軽減できる可能性があると述べている。
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