資生堂は、2012年4月から提供している総合美容ウェブサービス「ワタシプラス(watashi+)」でソーシャルマーケティングを担うシステム基盤を強化した。この基盤強化は約3カ月で完了し、3月から本番稼働を開始している。野村総合研究所(NRI)が4月28日に発表した。
ワタシプラスは、2012年のサービス開始以来、会員数が2014年11月時点で200万人を突破するなど順調に拡大しており、資生堂では一般消費者との接点を今後さらに増やすべく、普及が進むLINEなどのソーシャルメディア配信を活用したマーケティング施策を強化している。
ソーシャルマーケティングでは、プロモーション施策を打った際に、短時間に大量のアクセスが生じることが特徴。これまでのワタシプラスのシステム基盤では自社設備で構築、運用していたこともあってシステム資源を弾力的に運用できず、販促業務の一部で制約を受けていたという。そこでIaaS/PaaS「Amazon Web Services(AWS)」を有効活用したハイブリッド化でシステム基盤を強化した。
NRIは、ワタシプラスの事業モデルの企画から、実現に向けた情報システムの設計、開発、システム運用監視にいたるまでを支援。ワタシプラスのシステム基盤の一部をAWSに移植する支援を通じて、従来想定の約10倍の大量アクセスに耐えうるシステム基盤を実現したと説明する。
関連するシステムの安定性を大幅に強化するとともに、ワタシプラスが今後進める戦略的なマーケティング強化に伴うシステム資源の拡張性と運用の弾力性を確保している。
既存の自社設備を生かしたハイブリッド化で、一般的に、システム基盤構成の変更に伴う移行、検証作業、システム管理と運用業務の大幅変更が伴うため、コストやスピードの面でビジネスの阻害要因となる懸念がある。
NRIは、これまでのAWS導入経験や先端IT分野での研究開発の実績を生かして、性能低下の原因となるボトルネック部分だけをクラウド化するシステム基盤を企画、提案。資生堂とともに検証とその実現を図った。
「現状の運用は極力変えずに、必要なときに必要な分だけシステム資源を増やしたい」というビジネス課題を短期間で解決する同時に、ワタシプラスを利用する一般消費者はもとより、資生堂のサイト管理者にとっても、自社設備とAWSを意識する必要のない運用を実現したとしている。
約200万人の会員が利用するワタシプラスには、資生堂の事業戦略に貢献し続けるための柔軟性と先進性が求められるとともに、高度な情報セキュリティ対策が必要となる。
今回のハイブリッド化では、NRIセキュアテクノロジーズが提供するクラウド型のウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)「WAF管理サービス for AWS」の採用をはじめ、業界標準のサービスやオープンソースを組み合わせ、セキュアで高い拡張性をもつAWSの特長を生かすことで、ハイブリッド環境上でもセキュリティ水準の高いシステム基盤を実現したとメリットを説明している。