ERPは“記録”から“イノベーションシステム”へ
SAP創業者の一人であるHasso Plattner氏のアイデアから生まれたインメモリ技術HANAは、2010年のSAPPHIRE NOWで正式に発表された。その後、オンライントランザクション処理(OLTP)とオンライン分析処理(OLAP)の共存を実現し、Business Suiteの土台となり、クラウド基盤としての展開も始まった。
2月に発表したS/4 HANAにより、HANAを土台とする次世代ERPを新たに打ち出した。「ERPが記録のシステムからイノベーションのシステムになる」(McDermott氏)と強調。
シンプルなデータモデル、10分の1に圧縮されるデータ量、最大で1800倍という高速性、高い処理能力などの特徴を持ち、新しいユーザーインターフェイス「Fiori」によりシンプルかつ直感的に操作できる。
実装の選択肢として、オンプレミス、マネージドクラウド、パブリッククラウドの3種類を提供する。発表以来、既に約400社が採用していると指摘。「完璧なエンタープライズを手に入れられる。これがS/4 HANAだ」とMcDermott氏は話す。
データ主導とシームレスというキーワードに加えて強調したのが、ビジネスネットワークだ。取引先、顧客企業、提携企業などで構築されるビジネスネットワークは、規模の大小に関係なく参加できるというメリットがある。
SAPはここで、Ariba、Fieldglassなどの企業を買収しているが、最新の動きが2014年秋に83億ドルをはたいて実施したConcurの買収だ。
講演中、ステージ上にConcurの社員が出張経費精算レポートをデモしてみせた。シアトルからサンフランシスコに出張するというシナリオで、音声検索によりフライトを調べたり、ホテルのウェブサイトから直接予約するなど行程表を作成する。
これらの企業はビジネスネットワークに参加しており、Concurと接続しているので、実際に出張すると自動的にレポートに記録されていく。また、出張先で顧客とレストランで食事をした後は、モバイルアプリを使ってレシートを写真に撮って報告書に加えた。

航空券(United Airlines)、ホテル(The Westin St. Francis)、Uber、スターバックス、レストラン(Slanted Door)と1回の出張での経費が自動記録される。