2014年、ネパールのArt&Techカンファレンスに参加した。僕はシンガポールに在住していて、アジアの個人開発者などの“Makerムーブメント”について執筆している。普段書いているのはハイテクノロジだったり変わった形のイノベーションだったり、何かしら新しいモノだ。ネパールのカンファレンスはすごく印象的で今も鮮明におぼえているのだけど、何かのアウトプットにはつなげられずにいた。
4月25日、ネパールのカトマンズ近郊で大きな地震があった。Facebookは、地震後すぐに安否確認の機能を立ち上げた。僕はネパールに、18人のFacebookフレンドがいる。幸い全員が無事だったようだ。最後の人が「無事だ」と返してくれたのは8時間前の5月3日、地震から一週間近くがたってからだ。僕が最後に、1週間もネットから遠ざかったのはいつのことなのか、もう思い出せない。彼らが早く、元の生活に戻れ、過去を悼む日々が過ぎることを望む。
ここでは、彼らの復興を祈念し、震災前にネパールで活動していたMakerたちのプロジェクトを紹介したい。
Facebookのネパール地震賛否確認ページ
ネパールのIT
ネパールは、ヒマラヤがあるため有名な国だが、実際に行ったことがある人は少ないだろう。トレッキングが趣味の人はともかく、それ以外の人は「チベットとかパキスタンとかインドあたり」など、場所もちゃんと答えられないことが多い。
中国の深圳でDIYの世界的なイベント「MakerFaire」に参加したときに、Sakarというすごく陽気なネパール人と友達になった。上背も厚みもある南国的な体格の人で、工場の機械の音がマシーンビート的に格好よくて、一緒に工場内で踊り出したのを覚えている。
彼はKarkhanaというITを使った教育を行っている集団の代表で、その後、シンガポールのイベントでもブースを出してくれ、仲良くなった。
ある日彼からメールが届いた。ネパールで最初のアート&テクノロジのフェアをやるという。深圳で僕がプレゼンしたチームラボの作品がすごくいいので、ネパールのクリエイターたちにぜひ見せたいというメールだった。
Yantra3.0のサイト
リンク先を見ると、壮麗なヒマラヤの風景のもと、「ガイコクジンが考える“ネパールっぽくてエキゾチックだね”と思うものしかネパールのアーティストが作れない状況を変えたい」「1000年以上前の石と鉄でできたネパールのアートに、テクノロジを加えるとどういうものができるか見たい」など、アツいメッセージが並んでいる。かと思うと、どうみても“ヘボコン”クオリティのロボットに切り替わったりする。
ロボット相撲の様子。なんでこの形になったんだろう
交通費諸費用など全てこちらから持ち出しで、しかもネパールから東京に直行しないと間に合わない日程だったとはいえ、行くことにした。
学生時代は登山サークルだったのでヒマラヤにあこがれはあったし、ネパールのテクノロジイベントの記事はウェブでほとんど見つからない。多少苦労しても行きたくなった。