ナデラ氏率いる新生MSに残された3つの疑問

Jason Hiner (TechRepublic) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-05-14 06:00

 サンフランシスコで2週間前に開催された「Build 2015」開発者カンファレンスの勢いに乗って、シカゴで先週開催された「Microsoft Ignite」イベントに臨んだMicrosoftは、自社の印象を変える好機を捉えた。

 その物語を信じるなら、新生Microsoftはブルドッグというよりむしろグレイハウンドに近いイメージだろう。そして、Microsoftの最高経営責任者(CEO)を務めるSatya Nadella氏は、The New York Times(NYT)に掲載された記事の中で、「過去のドル箱商品を保護することよりも、新しいテクノロジに大きく賭けることに前向きに取り組む姿勢」があると書かれていた。

 その言葉は慎重に解釈した方がいい。

 Nadella氏が現在の地位にいるのは、同社株主の利得を増やすことを主な動機とするグループである、Microsoftの取締役会の意向によるものだ。その地位は、利益を出し、株主に今後はさらに大きな利益を生み出すと納得させることによって成り立つ。

 そうした世界では、ドル箱商品から最大限の利益を得ることは全く問題のない戦略である。

 Steve Ballmer氏がMicrosoftのCEOとして、技術革新がほとんどなかった約15年間を生き延びたのは、そのためだ。Ballmer氏が「Windows」と「Microsoft Office」で行ったように、テクノロジ業界で、同氏ほど上手くドル箱製品から最大限の利益を引き出したリーダーはいない。

 しかし、利益を得ることに集中しすぎたため、Microsoftはモバイル革命への対応を誤り、将来の見通しが不確かになった。Microsoftは新しいテクノロジに大きく賭けている企業だという新しいイメージをNadella氏が売り込もうとしているのは、そのためだ。同氏は一般の人々を説得して、Microsoftの未来を再び信じてもらう必要がある。

 Nadella氏は正しいことをたくさん話しているが、この10年間、同社の進歩を妨げてきたさまざまな障害を新生Microsoftがどのようにして乗り越えていくのかは、依然としてはっきりしない。最も優秀なプロダクトリーダーの多くが何年も前に同社を去ってしまっていることを考えると、なおさらである。

 そのことはさまざまな疑問を提起するが、本記事では最も重要な3つの疑問を取り上げる。

1. Microsoftが顧客の生活を向上させるために他社より上手くやれることは何か

 1980年代と1990年代、Microsoftは、企業や消費者が革命に参加できるほどパーソナルコンピューティングのコストを下げ、使い勝手を向上させた。それによって、認知度を高め、事業を拡大させた。さらに、同社はほかの誰よりも上手に標準のプラットフォームを作り出した。Windowsは、開発者がアプリを構築する標準のプラットフォームだった。Microsoft Officeは、ユーザーが文書を作成する標準のプラットフォームだった。

 当時のMicrosoftのソフトウェアの品質と商慣行に異議を唱える者もいるが、そうした標準を作り出すことは、PC時代とインターネット時代を推し進める上で重要だった。そして、それがMicrosoftを巨大なソフトウェア企業に変えた。

 Microsoftは、社会の進歩やテクノロジの向上を実現するために、今は何をしているだろうか。次の5~10年間、同社が頼りにできる中核製品は何なのだろうか。WindowsとOfficeは今後も売り上げを生み続けるだろうが、もはや両製品に必要な技術革新はほとんどない。Microsoftが何かユニークなものを追加し、テクノロジの方向性を決定できる新市場は何なのだろうか。

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提供:Nate Ralph/CNET

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