創造性とイノベーションこそが企業の核心だと言われるが、企業の歴史は、かつては優良だった企業が革新性を失い、競争力を失っていった例にあふれている。だが幸運なことに、企業の歴史にはわれわれが学ぶべきイノベーターも数多くおり、その教訓を生かすことは、われわれ自身が次のSteve Jobs氏やBill Gates氏、Walt Disney氏でなくてもできる。
提供:iStock.com/goir
「可能なこと」の先を見る--Walt Disney氏
筆者は最近家族でディズニーワールドに行ったのだが、そこでWalt Disney氏の遠大なビジョンと前向きさを改めて意識することになった。近年、同氏はイノベーターとしてやや過小評価されているが、このテーマパークを訪れると、同氏がエンターテインメント、テクノロジ、教育、そして当時可能だと思われていたことの限界を突破してみせた人物だということをはっきりと理解させられる。同氏は優れたアニメを作っただけでなく、フロリダの沼地だった土地を、当時の常識を根底から覆すテーマパークに変貌させた。Disney氏は、「不可能を実現することには、一種の楽しさがある」と述べている。因習や周囲の批判、そしてテクノロジの先に何があるかを見通す能力は、イノベーションを生み出す力だ。
現状の再定義--Elon Musk氏
固定化された、変化が起きない産業を挙げろと言われれば、ほとんどの人がそのトップ10のリストに自動車産業を入れるだろう。100年の歴史、固定化された競合相手、そして変化の少ないビジネスモデルなどを考えれば、自動車産業は、新興企業が型破りな製品を引っさげて参入することなど不可能な業界に思える。しかし、Elon Musk氏とTesla Motorsは、型破りな製品とビジネスモデルを携えてこの市場に殴り込みをかけた。これらはあまりに型破りだったため、同氏らは懐疑論から規制の壁まで、あらゆる困難に直面した。システムやプロセス、競争市場、あるいは業界そのものが一枚岩で、変化などあり得ないように見えても、実際にはそうではない。
自分自身の変革--Bill Gates氏
Bill Gates氏はテクノロジの領域でさまざまな業績を残しているが、劇的かつ印象的な「第2の人生」 を始めた人物としても知られる。同氏は、今や病気の緩和や撲滅から教育に至るまで、あらゆる分野で積極的に活動している、世界でも有数の活動家の1人だ。Gates氏の動機を疑う皮肉屋もいるだろうが、同氏は自らが持つ財産、知性、そして研ぎ澄まされたビジネス感覚を、ポリオやマラリアの撲滅といった手強い問題に適用している。勤勉さと十分な計画を伴う勇敢な行動が必要ではあるが、ある業界で成功を収め、専門家としての力量を備えるようになっても、自分の才能をまったく異なる世界で生かすことを選択肢から排除すべきではない。