AT&TのSomasundaram氏は、「各業種によって、IoTの活用目的とその手法は異なる」と解説。物流などでは、輸送の最適化によるコスト削減といった「既存コストの見直し」と、物流に関するビッグデータを活用することで「新規サービスの創出」も期待できるというのが、同氏の考えだ。
ThingWorxのDavid氏は、「医療機器で新たな動きがある可能性がある。現在、通信機能を備えている医療機器はセンター(サーバ)とは通信するが、機器同士の通信はしない。これが通信するようになれば、医療現場に変化が起きるのではないか」と指摘する。

Wind River バイスプレジデント Keith Shea氏
WiproのAtkinsは、「業種の切り口ではないが、IoTは企業規模を問わず新たなサービスを創出できる可能性を秘めている。例えば配車サービスのUberの登場で、既存のタクシー業界は変革を迫られている。アイデア1つで“地殻変動”が起きるのがIoTを活用したビジネスだ。大手企業も、現在のビジネスモデルの上にあぐらをかいていてはいけない」と訴えた。
また、パネリスト全員が「IoTは会社組織や仕事内容を変える」と指摘する。
ThingWorxのDavid氏は、「IoTを導入している企業は、すでに『会社組織全体としてIoTをどのように活用できるか』に着眼し、ビジネス部門の業務プロセス最適化を考えている。例えば、顧客管理やマーケティングなど、バックエンドの情報とIoTの情報と連携させて可視化することで、新たな知見を見いだそうとしている」と指摘する。
Wind RiverのShea氏も「IoTでビジネスプロセスを直すとなれば、ビジネス側の人材もIoTに関わるようになる。これまでIT部門の管轄だったアプリ開発も、使いやすいIoTプラットフォームがあれば、ビジネス部門でもアプリ開発に携わる可能性が出てくる。これにより、ビジネス部門とIT部門が連携できるようになるのではないか」と語る。

AT&T IoT部門セールスディレクター Sunder Somasundaram氏
過度な期待は禁物--セキュリティを甘く見るな
とはいえ、IoTに過度な期待は禁物だとAT&TのSomasundaram氏は警鐘を鳴らす。「IoTで何をしたいのかを明確にする必要がある。目的とビジョンが不明確な状態で、データだけ収集しても成功しない。残念だが『データを収集すればビジネスの課題が解決できる』と考えている企業は少なくない」(同氏)
セキュリティについても「考えが甘い」(WiproのAtkins氏)企業が多いという。Atkins氏は、「オンプレミスにあるデータとクラウドで管理しているデータがあるように、IoTでも収集されるデータの種類によって、セキュリティ対策レベルを分ける必要がある。さまざまなポイントでレベルの異なるセキュリティ対策を講じることが重要だ」と訴えた。
最後にWind RiverのShea氏は、「IoTは1社だけで完結できると思わないこと」と提言する。インフラ構築の部分――例えば、組み込みや通信サービスなど――はそれぞれの専門ベンダーと協業し、パッケージされたサービスを使うのが“賢い”手法だ。インフラ基盤構築にかかる時間と労力を削減し、IoTアプリ開発に注力すべきだ」とアドバイスした。