バルセロナの礼拝堂で動く強力スパコン「MareNostrum」、その活躍と未来--ARMベース「Mont-Blanc」も - (page 2)

Anna Solana (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-05-15 06:30

「科学を支える3つめの柱」

 MareNostrumは多数のプロジェクトに利用されている。処理能力の70%は欧州の研究者に、24%はスペインのプロジェクトに割り振られている。残りの6%は、BSCの多彩なイニシアチブ用に確保されている。

 Valero氏はよく、「スーパーコンピューティングは科学を支える3つめの柱だ」と言う。1つめの柱は理論で、2つめは実験室での研究だ。MareNostromは1秒間に1000兆回の演算を行い、大量のデータを保存することができ、その利用方法は無数にある。Valero氏は、「どんな分野にも利用できる顕微鏡のようなものだ」と述べた。同氏は1974年にカタルーニャ工科大学で教鞭を執り、今もスーパーコンピューティングについて情熱的に語る。

 Valero氏は、MareNostrumを利用する企業の例として、マドリードに拠点を置く世界的なエネルギー企業Repsolを挙げた。同社はMareNostrumを使うことで、海底を観測して石油がありそうな場所を高い精度で予測する新しいアルゴリズムを開発し、成功率が25%あれば高いとみなされる業界に、少なからぬ節約をもたらしているという。

 同じくスペインのエネルギー企業で、風力発電に注力するIberdrolaは、MareNostrumを使えば、風力発電施設内でタービンの建設に最適な場所を調査できることに気づいた。同スーパーコンピュータで実行したシミュレーションによって、パフォーマンスが5%向上した。BSCの研究者は現在、プロジェクトの第2段階に取り組んでおり、短期的な発電量を正確に予測することを目指している。その予測は、再生可能エネルギー企業が送電網へのエネルギーのフィードバックを計画する際に役立つ。

 BSCは、同じエンジニアリングの分野で、バイオシミュレータの開発に取り組んでいる。このシミュレータは、心臓や呼吸器系の仕組みを詳細に示すものだ。

 生命科学の分野において、同センターは、ゲノミクスや医薬品開発の問題に取り組むバルセロナやスペインの機関にとって、欠くことのできないパートナーになった。Natureは数カ月前、BSCが開発した「Smufin」ソフトウェアを取り上げた記事を掲載した。記事では、Smufinを利用して、臨床使用と研究の両方の目的でゲノムの比較を容易にする仕組みが紹介されている。

 さらに、BSCは欧州ゲノムフェノムアーカイブ(European Genome-phenome Archive:EGA)もホストしており、ここには世界中の200のセンターと研究グループが10万人以上のゲノムデータとフェノムデータを保管している。パーソナライズ医療を前進させる基礎となるリソースだ。生成されるデータの量は驚異的で、必然的にセキュリティに対する懸念が生じる。しかし、Valero氏は、「バイオインフォマティクス(生命情報学)データの保護は、携帯電話で毎日利用されている膨大な数のアプリケーションのデータを保護するより簡単だ」と述べた。

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