ノークリサーチは5月12日、2015年の国内中堅・中小企業における「ビッグデータ」「IoT」「M2M」「ウェアラブル」への投資動向に関する調査を実施し、分析結果を発表した。
新規のIT活用領域市場ポテンシャル(2015年)
調査では、注目を集めている新たなIT活用領域への投資意向について詳しく聞いている。上図は、新たなIT活用領域として「ビッグデータ」「ソーシャル」「デジタルサイネージ」「IoT/M2M」「ウェアラブル」の5分野について、投資規模をプロットしたもの。
こうした新たなIT活用領域と、従来のIT活用領域の関係を整理すると、下図のようになる。「コミュニケーションの対象または手段」「データの入出力を担う端末」「データの格納場所および活用方法」といった3つの観点において、拡大や多様化が生じたことで新規のIT活用領域へと発展したととらえることができる。
ここで注意すべきなのは、図にも示されているように5つの分野が互いに関連しているという点。ビッグデータはソーシャルやIoT/M2Mから収集されたデータを分析対象とするため、ソーシャルやIoT/M2Mの構成要素と見なすこともできる。このようにIT投資という観点で見た場合、5つの分野は相互に重複している部分がある。
「従来のIT活用領域」と「新規のIT活用領域」の関係
IT用語に頼らないことが重要
新規のIT活用領域に関するニーズや投資意向を考える上では、以下の2点を踏まえる必要がある。
- 5つの投資分野の定義はさまざまである
- 5つの投資分野は互いに関連/重複している
調査では、5つの分野の定義を記載した上で、業種の違いを意識した具体的なIT活用シーンを提示し、それらの活用シーンに対するニーズや投資意向を聞く形式を取っている。
実際に中堅・中小企業に対してニーズや投資意向を聞く具体的な活用シーンの例は以下の通り。
【ビッグデータ関連】- 大量データをコンピュータに学習させることによる画像やパターン認識の精緻化
- 電気、水道、ガスなどの利用状況を集計、分析することによる省エネ対策の実現(インフラ関連業などを意識した活用シーンの例)
- ICカードやスマートデバイスなど複数機器の利用情報を総合することでのニーズ把握
- 消費者のインターネット閲覧状況を集計、分析することによる商材提案の最適化
- 顧客が店内、施設内を移動する流れを把握することによる陳列や出店の最適化(小売業を意識した活用シーンの例)
- 車両や歩行者の通過状況を記録、分析することによる道路管理計画の最適化
- 気象状況を記録、分析することによる防波堤や防風林などの設置計画立案
- 車両の走行データを収集、分析することによる燃費改善や運航ルートの最適化(運輸業を意識した活用シーンの例)
- 製造装置にセンサを取り付け、稼動状況を集計、分析することによる生産性の向上(製造業を意識した活用シーンの例)
- 自動車や家電の稼動状況を把握することでの付加サービスや買い替え提案の実現
- 設備や機器の状況をネットワークで収集することによる保守作業の効率化
- 道路や建物に備えたセンサ情報を収集することによる補強/補修の必要性把握(建設業を意識した活用シーンの例)
- 積荷にセンサを取り付けて管理することによる入庫・出庫作業などの効率化
- メガネ型のウェアラブル端末による、作業中にもマニュアルを参照できる環境の実現(保守サービス業を意識した活用シーンの例)
- ウェアラブル端末を用いた生活実態把握による商材開発やマーケティング施策立案
- メガネ型のウェアラブル端末による、作業中にもマニュアルを参照できる環境の実現
- ウェアラブル端末を用いた高齢者、ペット、子供の健康管理や徘徊、迷子の防止(介護サービス業などを意識した活用シーンの例)
- ウェアラブル端末を通じた通知を行うことによる店舗への集客力の強化
調査は、年商5億円以上~500億円の国内企業を対象として2015年1月~4月にかけて実施し、有効回答数は771社だった。中堅・中小企業における市場ポテンシャルは「ビッグデータ」が1720億円、「IoT/M2M」が940億円、「ウェアラブル」が750億円に上るという。