英国政府が法律を「ひそかに」改正し、諜報機関がコンピュータ、携帯電話、ネットワークをハッキングしても訴追されないようにしたようだ。
プライバシー擁護団体のPrivacy Internationalによると、同団体が英国の諜報機関である政府通信本部(Government Communications Headquarters:GCHQ)に対して起こしていた訴訟で、英政府が諜報機関によるサイバー攻撃を可能にするため、コンピュータ不正使用法(Computer Misuse Act)を書き換えていたことを、公聴会の始まる「数時間」前に告げられたという。
Privacy Internationalは、今回の法改正は、2014年に同団体が起こした訴訟に対するあからさまな対応策だと主張している。これは、Edward Snowden氏が持ち出したファイルに記載されていたようなGCHQによるハッキング行為が報じられたことに対抗するものだ。Snowden氏のファイルには、GCHQがスマートフォンをはじめとする機器を遠隔操作できると記されていた。
しかし、この申し立てから1カ月後の2014年6月、英国政府はコンピュータ不正使用法を改正する法案「Serious Crime Bill」の一部としてこの方策を採用した。法案は2015年3月3日に成立しており、そのわずか数日前には諜報機関に対する民事、刑事事件を扱う国内の独立法廷で、GCHQによる大規模な監視プログラムが違法であるとの判断が下されていた。
Privacy Internationalは声明で、「どの規制機関、国の諜報機関を監督する検査官、情報コミッショナー事務局(Information Commissioner's Office:ICO)、業界、NGO、あるいは国民にも、提出された法改正について通知や意見収集がなされた形跡はないようだ」と述べた。
今回の法改正は、Privacy Internationalによる申し立てを変えるだけでなく、「英国の法執行機関に新たな自由裁量の余地を与えることで、国内でサイバー攻撃を実行できるようにする」ものだ(通常、法律の改正は議会で審議されるが、同団体は、問題の法律が「気付かれないように」、「議会で正式に審議されないまま」修正されたと主張している)。
GCHQは5月に入り、ネットワークとコンピュータに強いハッカーを初めて公募すると発表し、その狙いは「国の重要なインフラに対する攻撃を探知および阻止することと、情報、個人情報、金銭を盗もうとする犯罪者から政府のシステムを守ること」だとした。
Privacy Internationalによる訴訟は、2015年中に欧州人権裁判所に持ち込まれ、今後も審議が続けられる予定だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。