内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門不要論を跳ね返せるのか

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2015-05-20 07:30

 昨今、IT部門の組織ミッションを再定義する動きが活発化しています。これは、経営者やユーザーからの期待だけでなく、ビジネスに貢献したいというIT部門の意識の表れではないでしょうか。現状にとどまっていては存在価値が減衰する危機感から、組織ミッションを拡張しようとする動きともいえます。

 これはユーザー企業のIT部門にサービスを提供しているSI企業などのITベンダーについても同様のことが言えます。

IT部門の存在意義の再検証

 近年、IT部門の組織ミッションや求めるべき人材像の再定義に関する問い合わせやプロジェクト支援依頼が急増していますが、これはIT部門の存在意義が岐路に立たされている証と言えます。


 この背景には、経営環境の加速度的な変化、市場のグローバル化、ビジネスにおけるITの重要性の高まりといったビジネス上の要因に加えて、クラウドコンピューティングの台頭やモバイルやソーシャルに代表される「ITコンシューマーライゼーション」の浸透という技術的な新潮流が介在しています。

 これまでのように、エンタープライズITと呼ばれる領域で、アプリケーションやITインフラの企画、開発、運用を確実に遂行するというIT部門の基本的なミッションを果たすだけでは、もはや存在意義を十分に確保することができなくなってきています。多くのIT部門が、活路を模索している状況と言えます。

これまでもあったIT部門不要論

 これまでにも企業におけるIT活用の歴史のなかで、エンドユーザーコンピューティングの台頭、統合基幹業務システム(ERP)に代表されるパッケージソフトウェアの浸透、ベンダーへの売却や資本参加を前提とした戦略的アウトソーシングの潮流など、幾度となくIT部門の存在意義が問われました。IT部門不要論と言えるような議論が噴出したこともありますが、実際のところなくなっていません。

 果たして、今回もそのような議論の再来と言えるのでしょうか。ユーザー部門が気軽にクラウドサービスやコンシューマーITを活用して業務を遂行したり、新たな顧客価値を創出できるようになった時に、IT部門が不要論を跳ね返すだけの存在価値を示すことが本当にできるのか疑問です。

 こうした議論を跳ね返して存在価値を誇示していくためには、何らかの変革が必要なのではないでしょうか。全体最適の視点やITガバナンスの「守護神」としての役割の強化は依然として重要ですが、そこにとどまらず自ら組織ミッションを拡張していくことが、これからのIT部門の生きる道だと思います。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. セキュリティ

    Microsoft Copilot for Security--DXをまい進する三井物産が選んだ理由

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]