内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門不要論を跳ね返せるのか - (page 2)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2015-05-20 07:30

組織ミッション拡張の方向性

 IT部門が組織ミッションを拡張していく方向性に関して、社内の他部門との接点という観点から最近の傾向を見ると、「経営層/経営企画部門」「マーケティング部門」「事業部門」の3つの方向性が考えられます(図)。

図.IT部門の組織ミッション拡張における3つの方向
図.IT部門の組織ミッション拡張における3つの方向

 言うまでもなく、IT部門はこれまでもこれらの部門を支援してきたし、協力して企業のIT活用を推進してきました。しかし、その多くは各部門からの依頼や要求に基づくものであり、技術的支援やシステムの提供という役割にとどまっていたのではないでしょうか。

 しかし、これからのIT部門が考えるべき組織ミッションの拡張においては、これらの部門に対する間接的な支援を強化することにとどまらず、より能動的な働き掛けが求められます。

 ITの潜在力を生かして、それぞれの部門ではなし得ない変革を促すことに加えて、彼らの業務を専門的な見地からアドバイスしたり、一部の業務を代行したりすることも考えられます。


 ここで示した3つの方向性のそれぞれを推し進めていく上で必要となる取り組みや、その際にIT人材に求められるスキルについては、今後本連載で順次詳しく述べていくこととします。

 また、これら3つの方向性は、IT部門が組織ミッションを拡大する際の候補となる領域であり、全てを同時に推し進めなければならいというわけではありません。IT部門と対象部門の距離感や現状のIT部門の力量などに応じて軸足の置き方を選択しつつ、一歩ずつ拡張に臨むことが求められます。

 能動的に他部門に働き掛け、ミッションを拡張していくことは容易なことではなく、IT部門スタッフ自らが大きな意識改革を行うことが必要となります。一方で、現状に甘んじていては存在価値が減衰していく可能性があることを今一度念頭に置いて組織ミッションを再検討することが求められるのです。

内山 悟志
アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。

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