ヤフーは、国際会計基準(IFRS)対応やスピード経営を果たすため、財務会計システムを刷新、8カ月という短期間で開発を完了し、2014年10月から稼働を開始させた。構築を支援したTISと統合基幹業務システム(ERP)製品を提供した日本オラクルが5月19日に発表した。
ヤフーは、国内ベンダーのERPパッケージを2005年に導入し、決算業務や債務管理に利用してきたが、事業規模の拡大に伴い売り上げが導入当時の3倍に増加したことで、旧システムでの処理が間に合わないなどの不具合が起きるようになっていた。
また、2014年度からIFRS対応の決算開示が決定しており、旧システムではこれに対応するには作業工程が複雑化することなどを懸念し、IFRS対応ERPへの移行を検討していたという。
そこで2013年に新たなERP導入を決定し、パートナーとして選定されたTISが2013年9月から約3カ月かけて業務分析と各製品の性能評価を実施。最終的に「Oracle E-Business Suite」の採用を決めたという。
数カ月の間隔で業務や組織が大きく変貌するスピード経営に対して、E-Business Suiteに高い適性がある点が決め手になったという。
また、データソースの構造が公開されているため、業務に合わせて柔軟にカスタマイズでき、モジュール追加により適応業務範囲を拡張できる柔軟さなども評価した。
新ERPへの刷新プロジェクトは、2月の四半期決算報告での新システムの活用を目指し、2014年2月に導入作業を開始、同年9月に8カ月間の導入フェーズを終了した。導入に際しては、約15の既存システムとの連携が必要となったが、そこではTISがE-Business Suite向けに独自開発したツール「TIS自動仕訳エンジン」を活用している。
同ツールは、専用画面で仕訳ルールを設定することで、既存システムのデータをE-Business Suite向けに適切に変換できるため、個別のアドオンの開発が必要なく、プロジェクトのプログラミングの工程の大幅な圧縮に貢献した。
「Oracle E-Business Suite」導入後のシステム構成
新システムにより、データ集計のバッチ処理が約半分に短縮するなど、処理速度が改善した。同時に、決算業務が単純化し、作業手順がより厳密になることで、内部統制の強化にもつながっているという。当初の予定通り、ヤフーが2月に開示した四半期決算報告では、新システムで処理したIFRS対応の決算情報が用いられている。
同社は、今回の導入で経営情報をタイムリーに閲覧するための仕組みの第一歩を実現。今後は新システムの適応範囲の拡大とデータの蓄積を進め、経営の意思決定の迅速化に貢献するシステムとしての活用を目指すとのこと。