クラウドアレルギーの処方箋

パブリッククラウド特有のリスクをあらためて考える - (page 3)

酒井慎

2015-05-26 07:00

サービス運用に関するリスク

 サービス運用に関するリスクは、クラウドサービス運用の業務設計からサービス運用関連の全てをベンダーに依存することに伴うリスクである。

 クラウド環境では、複数のユーザーが1つのシステムを共有する。そのため、他ユーザーのリソース占有状況次第で、自社のサービスレベルに影響を及ぼすことが懸念される。例えば、他のユーザーのシステム処理量が急拡大した場合、自社サービスのレスポンスの悪化やシステム停止などの障害を招くことが懸念される。

 ユーザーとしてサービスレベルを継続的に維持するための手段の1つに、SLA(サービス品質保証)やSLO(サービスレベル目標)の締結がある。

 しかしながら、パブリッククラウド環境の場合、合意する項目や内容について、ユーザーの希望に則した柔軟な調整ができない場合が多い。そのため、ユーザーとしてはサービス利用の選定段階で、利用サービスのサービスレベルへの自社要求への適合性や、仮にギャップが生じている場合のリスクに関する十分な確認が必要となる。

 また、日常的な運用情報の収集の観点でもリスクが存在する。システムの障害情報や計画外停止などの情報は、ユーザーが能動的にベンダーのウェブサイトなどにアクセスし、自社の利用サービスに関係のある情報を選別、取得する必要に迫られる例がある。

 これらの情報は、オンプレミス環境では一般的にベンダーから随時報告を受けることができる内容であり、ユーザーとしては「待ち」の状況でも情報を得ることができた。

 しかし、クラウド環境ではユーザーの責任範囲の変化に伴い、このような些細だが重要なプロセスがユーザーに委ねられた結果、重要情報の共有不足などにより、あらゆる影響を招く恐れが出てくる。ユーザーの責任範囲が広まっていることも、ユーザーがリスクとして捉えるべき事項である。

 加えて、サービス利用の終了時におけるデータ移行のリスクも見逃せない。ユーザーが仮にクラウドサービスを終了し、自社運用への切り替えや他社への移行を希望した場合は、引き続き移行先環境で管理可能なデータ形式でデータを引き継ぐ必要がある。

 仮にベンダーが汎用性の乏しいデータ形式でしか準備ができない場合は、引き続き同一ベンダーとの契約を継続する(ベンダーロックイン)など、ユーザーにとって中長期的な選択肢を狭める結果を招く恐れがある。

 そのため、クラウドベンダーとして、ベンダー固有のデータ形式などにこだわらず、汎用性の高いデータをユーザーに提供する準備があることは、ユーザーにとって重要な確認ポイントとなる。

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