SAPの壮大なIoT戦略--センサからERP、そしてビジネスネットワークまで - (page 2)

末岡洋子

2015-05-25 06:30

――IoTは業界の大きなトレンドだが、SAPの強みはどこにあるのか?

 3つある。まずは業界のノウハウだ。SAPは40年以上ERPをやっており、各業界のビジネスプロセスなど深い知識を持っている。

 2つ目は、エッジからコア(バックエンド)まで、エンドツーエンドのIoT機能を提供すること。例えば、自動販売機にセンサをつけるとする。飲料などの在庫をモニタリングし、リアルタイムでその状況を把握でき、供給の調節やサービス技術者を派遣するなどのプロセスに結びつけることができる。SAPはこの分野に大きな投資をしており、エッジからコアプロセスまでをコーディネートできるデータ管理インフラを構築している。

 3つ目はビジネスネットワークだ。Ariba、Fieldglass、Concurなどの買収を通じて、多数のサプライヤーが取引をしている。たとえばPredictive Maintenanceを利用したシナリオでは、特定の部品が故障すると予測し、これを通知するだけでなく、サプライヤーを探して配達する、あるいは設定に必要な作業者やコンサルタントを派遣するところまでを自動で実施できる。

 このレベルの自動化は、他社には不可能だと自負している。SAPはHCPとビジネスネットワークの接続を強化しており、IoTシナリオを完全に自動化できる。今後もこの分野は強化していく。

 もう1つ付け加えると、HANAがコアになっている点は競合との差別化だ。20世紀のアーキテクチャを使っている他者とは違う。

――IoTは大きな市場となるが、市場開拓戦略は?

 HCPは重要な入り口となる。開発者にサンドボックスを提供するもので、無料でアクセスして開発をスタートできる。

 このほか、SAPのアプリケーションやソリューションの提供、業界別のソリューションの提供などさまざまなGo-To-Market戦略をとっていく。

――IoTのポートフォリオでかけているところ、強化するところは?

 IoT市場はコラボレーションが重要になる。エコシステムのパートナーシップが重要と考えており、提携戦略をとる。会期中SiemensやIntelとの提携を発表したが、今後も拡大していきたい。

――企業のIoTの受け入れにあたって課題はあるか?

 物理的な課題――センサの取り付けをどうするかなどもあるが、最大の課題は文化だろう。企業によって温度差がある段階だが、早いところは真剣に取り組んでいる。何かしらの戦略を立てていないと競合に先を越されるかもしれない。

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