中国ビジネス四方山話

中国で普及するネット注文のフードデリバリーサービス

山谷剛史 2015年05月26日 06時00分

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 中国人は弁当を食べる習慣がある。都市部にはコンビニが多数あり、弁当が売られている。さらにメジャーな習慣としては、中国の食堂では当たり前のように、使い切りの箱が用意され、料理を持ち帰ることができる。中国の店で店番をする店舗のスタッフが、発泡スチロールの使い切りの箱や大きなマグカップに入った食べ物を食べているのを見たことがあるだろう。ここ数年の都市部では、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドやピザハットなどの洋食のファストフードチェーンに電話をしてデリバリーしてもらうことが若い世代の間で広く認知されている。

 そんな中国でネットによるフードデリバリーサービスの人気が上昇している。外国でいえばGrubHub、日本ではごちクルやbento.jpがこれにあてはまる。調査会社のiResearchによれば、フードデリバリーサービスの市場規模は、2010年に100億元(約2000億円)弱だったが、2014年には1000億元(約2兆円)になると予想している。中国で様々なO2O(Online To Offline)サービスが立ち上がっているが、最も注目されているのが、フードデリバリーサービスだ。

 それでもまだフードデリバリーサービスを含むO2Oサービスの利用率は4.5%。利用者の注文に使うデバイスはパソコンよりもスマートフォンが圧倒的に多い。なにせ中国は人口が多いし、インターネット利用者も6億5000万人いる。普及したばかりのサービスだが、絶対数としては立派な数になる。フードデリバリーサービスに満足し、また使いたいとする人の割合は高く、これからもゆっくりと普及率はあがるだろうとiResearchは予想している。

 大都市ではこれらの会社のロゴのあるデリバリーの自転車をしばしば見かけるようになった。以前は大学周辺の学生街でこの手のサービスをよく見たが、学生向けは飽和したそうで、大都市のフードチェーンなどでデリバリー対応のシールが貼られるのを見るようになった。つまり都市においても露出は増えていて人々の眼には入ってきている。学生向けサービスの時の評価は「手間はかからないのはいい」「配達が遅すぎるときがあり困る」「定価20元のメニューが半額!とか書きながらとてもその額には思えない、騙していると思しきメニューがときどきある」など、かならずしも前向きな評価だけではなく、サービス改善の課題も残る。

 中国では、「餓了ma(口へんに馬)」「到家美食会」「美団外売」「淘点点」「百度外売」あたりがフードデリバリーサービスの主要プレーヤーだ。またマイクロブログ「微博(Weibo)」や、メッセンジャーの「微信(WeChat)」で、フォロワー向けにモノを販売する個人がいるように、フォロワー向けにフードデリバリーをする人も登場している。微信では、周辺の微信利用者を見つける機能があるので、この手の個人ビジネスがより簡単にできるのだろう。

 2014年から、O2O、その中でも特にフードデリバリーサービスが一気に注目が上がってきているのは、この主要プレーヤーが一気に攻勢をかけてきたからというのはある。餓了maは2014年に口コミサービス「大衆点評」から8000万ドルを、2015年に、騰訊(Tencent)や京東商城や大衆点評などから3億5000万ドルの融資を受け、豊富な資金源をもとに、配送スタッフを拡充し、中国260都市にサービスを拡大した。他にも2014年から2015年にかけてフードデリバリーサービス各社が日本円で数億円から数十億円の融資を受け、旬なジャンルに変身した。

 最近のトレンドとして、インターネットを活用する中国人消費者が意識するのは、「お得なら利用する」というところ。この数年で、タクシー配車サービスを筆頭に、あらゆる新サービスのスタートアップで資金力がある会社がお金をユーザーに落とし、お得すぎるサービスを提供して一気に普及した。ネットユーザーにサービス認知をさせるためには、如何にネットユーザーにお小遣いを上げるかがサービス普及の鍵となろう。

 また学生と異なり、社会人は金はある。安さだけを追求する食事を食べる学生と異なり、社会人には安全な食事や、食べたくなる食事をデリバリーしたいというニーズがある。昼に弁当を食べる習慣はあるけれど、食べられるものは常に同じで限られ、飽きている人もいる。日本の会社が参入し、本物の日本料理をデリバリーしても評価されるのではないか。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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