平均ROE8%以上の企業は積極的--JFEや日産など18社が「攻めのIT経営銘柄」に - (page 2)

大河原克行

2015-05-27 07:30

 調査票は、2014年12月に東証上場企業3400社に配布し、2015年1月19日までに210社から有効回答を得た。自由記述以外の設問を点数で評価。5つの評価項目から評価した。株主資本利益率(ROE)の直近3年間の平均が業種平均以上の企業をスクリーニングし、銘柄選定委員会で最終審査し、合議の上で選定した。評価項目は以下の5点。

  1. トップのIT活用に対する関心などによる「経営計画における攻めのIT活用・投資の位置づけ」
  2. IT人材の確保状況などを含む「攻めのIT活用・投資の企画に関わる社内体制およびIT人材」
  3. ビッグデータやモバイル、クラウドなどの新技術の活用や事業革新のための投資内容などによる「攻めのIT活用・投資の実施状況」
  4. IT投資を行った事業の目標達成状況やIT投資を行った事業の売上高や営業利益の変化による「攻めのIT投資の効果および事後評価の状況」
  5. 情報セキュリティ方針の策定と実行状況、情報システムの中断、停止に関わるBCP策定と実行状況などが対象となる「攻めのIT投資のための基盤的取り組み」

 「結果は業種によって大きく異なっており、回答を得た企業に対しては、平均得点と比較した得点内容を提供する」という。

富田健介氏
経済産業省 商務情報政策局 局長 富田健介氏
清田瞭氏
東京証券取引所 代表取締役社長 清田瞭氏(日本取引所グループ 取締役)

IT投資は量よりも質の問題

 経済産業省 商務情報政策局 局長の富田健介氏は、「サイバーフィジカルシステムが注目に集まる中で既存のビジネスが大きく変わってくる。現在、国内のIT投資は年間20兆円規模であり、GDP(国内総生産)比でも欧米と遜色ない。だが、日本の労働生産性は22番目であり、主要先進国7カ国の中では最下位」と現在の課題を指摘した。

 「IT投資の中身を分析すると、量よりも質の問題が浮かび上がる。日米間で比較すると、米国企業はビジネス変革や新製品開発などの攻めにITを活用しているが、日本企業はコスト削減が中心となった守りのIT投資になっている。より攻めに転換する必要がある。攻めのIT投資が加速すること、IT投資の情報が開示されること、攻めのIT投資を進める企業が市場から評価され、中期的に成長を遂げていくことを期待している」(富田氏)

 日本取引所グループの取締役で東証代表取締役社長の清田瞭氏は、「攻めのIT経営銘柄は、東証が推進しているテーマ銘柄として8回目。なでしこ銘柄では女性を活用を積極化している企業を表彰し、従業員や家族の健康に留意する企業を表彰する健康銘柄のほか、IFRS(国際会計基準)に採用にいち早く取り組んだ企業、株主総会の召集通知が早い企業なども表彰している」と同取引所の取り組みを説いた。

 「日本再興戦略で経済産業省は、日本の稼ぐ力向上に取り組んでいるが、攻めのIT銘柄は、それに連動したものになる。IT投資は、経費節減や省力化、ペーパーレスなどの守りの面で使われることが多かったが、経営の攻撃のツールとして利用している企業は、われわれのイメージよりも多いことにも気が付いた。日本の企業価値の向上に大きな役立っていると期待している」(清田氏)

伊藤邦雄氏
一橋大学 大学院 商学研究科 特任教授 CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏

収益力の高い企業は経営トップがITに高い関心

 銘柄公表にあわせて行われた基調講演では銘柄選定委員会で委員長を務めた伊藤氏が、選定にあたって実施した調査で企業の収益力とIT利活用との関係性が明らかになったと説明した。伊藤氏は、アベノミクスの「3本の矢」にも反映された「伊藤レポート」でも知られる。

 伊藤氏は、「IT経営が遅れている業種のひとつが水産農林業。これに対して、精密機器では全業種平均を大きく上回っている。水産農林業では攻めのIT経営に取り組んでいる企業もあるが、言い換えれば改善の余地がある業種ともいえる」などとした。

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