また、3年間の平均ROEが8%を超える企業は、攻めのIT経営に積極的であることをいくつかのデータから示してみせた。
たとえば、ITの活用や技術動向について、経営トップが最も関心や知見があるという企業は、ROE8%以上の会社で42.3%に達するのに対して、ROE8%未満の企業では21.0%にとどまった。また、ITを活用した事業革新のために事業部門にIT人材を新たに配置するなど対応した企業は、前者が42.9%であるのに対して、後者が27.7%。ITを活用した事業革新のために社内でIT人材を育成する計画があるとした企業は、前者が71.8%、後者が52.2%。情報システム部門の維持、改善について経営トップ自らが取り組んでいるとした企業は前者が43.7%、後者は20.0%となった。
これらのデータをもとに、「収益力の高い企業は、経営トップ自らがITに高い関心を持っている。IT部門が高い関心を持つだけでなく、経営トップがいかにITに関心を持つかが大切。稼ぐ力をつけるには、IT人材の育成が必要である。経営トップが情報システムの刷新などを情報システム部門に丸投げのままでは、収益力を高めることはできない」(伊藤氏)
ROE8%以上の企業では、「事業革新のためのIT活用」の取り組みを開始してから5年以上を経過している企業の割合が64.5%と圧倒的となり、伊藤氏は「他社に先駆けて、いち早く戦略的に攻めのIT経営を開始している企業の収益力が高い。早期に取り組むことが重要であるが、裏を返せば、1~3年では効果が出にくいということにもつながる」との見方を示した。
伊藤氏は「ROEが高い、“稼ぐ力”がある企業には、共通の特徴が見られている」と説明した。その特徴は以下の通り。
- 経営トップ自らがITについて高い関心がある
- 事業部門にIT人材を配置している
- 社内でIT人材を育成している
- 経営トップ自らが情報システムの刷新に取り組んでいる
- 経営トップが情報セキュリティリスクを認識し、対応している
- 積極的に株主などに向けてITに関する取り組み、説明している
- 事業革新のためのIT活用を他社に先駆けて開始している
「攻めのIT経営銘柄」に選定された企業の代表者による記念撮影